研究課題
基盤研究(B)
我々独自のハイドライド気相成長(HVPE)法では、転位密度が10^8cm^<-2>と高いものの不純物の取り込みが少なく深紫外光が透過する窒化アルミニウム(AlN)結晶が高速成長可能であった。一方、昇華法によるAlN結晶成長では、転位密度10^4cm^<-2>以下と極めて低い結晶が成長可能な反面、種々の不純物取り込みによって深紫外発光ダイオード作製で必須となる深紫外光透過性が得られない問題があった。平成24年度は、昇華法で成長した転位密度10^3cm^<-2>以下のAlN結晶をHVPE成長の種基板として用い、まずは低転位密度かつ深紫外光透過性を有する実用的AlN結晶を得ることに注力した。種結晶表面の酸化層の除去プロセス、HVPE法によるAlNの成長条件、成長した結晶の分離・研磨プロセスの検討を通して、転位密度が種結晶と同等で、波長206.5nm以上の深紫外光が透過する実用レベルのAlN結晶を世界で初めて実現した。この結果は、殺菌用の波長265nmの深紫外発光ダイオードを本結晶基板上に成長すれば、基板側から深紫外光を取り出すことができることを意味し、産業界で大変注目され、新聞の一面トップ記事となった。従来行っていたサファイア基板上へのAlNのHVPE成長の結果から、AlNの最適成長温度は1600℃程度になると予想しており、種結晶の新規局所加熱機構の導入を計画していた。しかし最終的に最適成長温度は1450℃程度となり、従来の局所加熱機構のヒーター素子の開発のみで研究を実施可能となった。そこで当初は平成25年度に実施予定としていた深紫外光透過性に影響を与える不純物の特定を試みた。最終的に、極わずかな炭素不純物が深紫外光透過性を消失させることを解明し、これは国際会議招待講演となった。一方、上述の世界初の実用的AlN結晶の上に実際に波長265nmの深紫外発光ダイオードを試作し、その特性を評価したところ、世界トップレベルの出力特性が得られていることを確認できた。この結果は平成25年1月に記者会見で新聞発表した。
1: 当初の計画以上に進展している
昇華法で成長した窒化アルミニウム(AIN)結晶をハイドライド気相成長(HVPE)法の種基板として用い、計画通り低転位密度かつ深紫外光透過性を有する世界初の実用的AIN基板結晶の作製技術を確立した。また、計画を前倒しにして深紫外光透過性の発現メカニズムを検討し、炭素不純物の取り込みが深紫外光透過性を消失させることを解明した。
平成24年度に確立した低転位密度かつ深紫外光透過性を有する窒化アルミニウム(AIN)結晶の成長技術をベースとして、炭素以外の酸素、シリコン不純物のドーピングによるAINの物性への影響調査を実施する。
昇華法で成長した窒化アルミニウム(AIN)結晶を種基板としたハイドライド気相成長(HVPE)法では、最適成長温度が当初の予想よりも低温となり、新規基板局所加熱機構の導入が不要となった。この分を従来の基板局所加熱機構のヒーター素子の購入に充てると共に、酸素、シリコン不純物のドーピングラインの整備を予定通り行う。
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http://www.tuat.ac.jp/disclosure/pressrelease/2012/20121225135159/index.html