研究課題/領域番号 |
24360006
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
熊谷 義直 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20313306)
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研究分担者 |
村上 尚 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90401455)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 窒化アルミニウム / 転位密度 / 深紫外光透過性 / HVPE法 / 昇華法 / 不純物 / 深紫外発光ダイオード |
研究概要 |
平成24年度、我々独自のハイドライド気相成長(HVPE)法による低転位密度かつ深紫外光透過性を有する窒化アルミニウム(AlN)のバルク単結晶基板の作製を実証した。これにより、窒化アルミニウム・ガリウム(AlGaN)系の深紫外発光ダイオード(UV-C LED)作製の下地として供することのできる実用レベルのAlN基板が実用化した。 平成25年度は、AlN結晶成長プロセスのパラメータ(成長温度,成長速度、昇降温時雰囲気等)が成長結晶の構造特性および光学特性に与える影響を詳細に調査し、AlN結晶の成長に適する条件(ウィンドウ)を解明した。成長温度1250~1450℃の範囲で、成長速度10~60ミクロン毎時でAlN単結晶厚膜のHVPE成長を行い、その後、HVPE層よりAlN基板を作製した。得られたAlN基板のX線回折ロッキングカーブの半値幅解析から、1450℃で成長速度50ミクロン毎時までは結晶性を損なうことなくAlN成長が可能だが、それ以上の成長速度では結晶性が急激に悪化することが明らかになった。一方、成長速度の増加と共に不純物濃度が上昇し、4.9 eV(253 nm)に吸収バンドが形成されることが分かった。これらの検討より、結晶構造品質および深紫外光透過性を維持するためには成長温度1450℃、成長速度30ミクロン毎時以下が最適成長範囲と解明された。 一方、実用化したAlN基板上へのUV-C LED作製を研究協力者と共に試み、殺菌・ウイルス不活性化に適する発光波長260-270 nmのUV-C LEDの性能を実用域(150 mA注入時の出力10.8 mW、寿命5000時間以上)まで到達させることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ハイドライド気相成長(HVPE)法で成長した窒化アルミニウム(AlN)のバルク単結晶より、低転位密度かつ深紫外光透過性を有する世界初の実用レベルAlN単結晶基板を作製できた。本基板が不純物をほとんど含まない高純度結晶であることを利用し、各種の不純物を意図的にドーピングする実験を実施し、深紫外光透過性の発現には炭素不純物を無くすことが必須であるという重要な知見を得ることができた。また、AlN基板の成長パラメータを詳細に検討することで生産性向上につながる最適成長条件を見出した。さらに、得られたAlN基板上に深紫外発光ダイオード(UV-C LED)を実際に作製し、実用レベルの性能を達成することに貢献できた。
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今後の研究の推進方策 |
低転位密度かつ深紫外光透過性を有する窒化アルミニウム(AlN)単結晶基板を実現できたが本基板は絶縁体である。そのため、その上に作製される深紫外発光ダイオード(UV-C LED)の構造が複雑化・大面積化すると共に電流狭窄部が存在する等の問題がある。本年度、n形ドーパントの供給ラインを結晶成長炉に付加し、n形不純物を含むAlNバルク単結晶を成長する。その後、不純物ドーピングが成長結晶の構造特性、光学特性、電気的特性に与える影響を解明し、最終的にはn形AlN結晶を実現する予定である。これにより、未だ報告例の無い、垂直型UV-C LEDの作製に向けた研究が加速される。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度(平成24年度)に、窒化アルミニウム(AlN)結晶の深紫外光透過性が消失する原因が炭素不純物の取り込みにあるという事実を予定より早く解明できた。そのため、ハイドライド気相成長(HVPE)法で成長した深紫外光透過性を有するAlN結晶への意図的な不純物ドーピング実験において、酸素の検討を省略することができた。これにより、平成25年度は成長パラメータがAlNの結晶構造特性、光学的特性に与える影響の解明に注力したため基金助成金の次年度使用額が発生した。 平成26年度に、窒化アルミニウム(AlN)結晶の電気的特性を制御する目的で、シリコンのドーピングを実施する。そのためのドーピングライン構築及び、シリコンをドープしたAlN結晶へのシリコン取り込み量の成長条件依存性評価で実施する二次イオン質量分析の依頼分析費用として使用する予定である。
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