研究概要 |
波長域(280-200nm)の半導体深紫外発光デバイス(LED、,電子線励起素子)は、発光効率、発光出力、信頼性が極めて低いことが実用化の障害となっている。この原因は、AlN,AlGaNの(1)結晶欠陥(転位、点欠陥、歪)、(2)低い紫外光取出し効率、(3)低い配光制御性(偏光特性、伝搬特性)にある。本研究では、上記問題を根本的に解決するために、ナノボイド(空隙)エピタキシーにより、「高品質AlN、AlGaNの結晶成長技術の構築」と「深紫外光の制御」を目的として、(1)ナノボイドエピタキシー技術の確立、(2)ナノボイドによる結晶品質の更なる向上、(3)ナノボイド構造による紫外光制御の確立を実施することで、電子線励起の高効率深紫外発光デバイスの実現を目指す。このうち、今年度は、ナノボイドエピタキシー技術の確立を目的として、選択成長技術によるサファイア上へのAlN成長と電子線励起の高効率深紫外発光デバイスの実現を目的としてSiドープAlGaN多重量子井戸を作製し,その発光特性の評価を行った。 MOVPE法により,1450℃で成長時間を5~180min変化させてストライプ溝基板上にAlN成長を行った。成長初期に斜めファセットが形成され、120min~180minにかけて,横方向成長により溝部でAlNの合体とボイドが生じた。カソードルミネッセンスの測定から、合体してから厚膜成長した部分で転位密度が小さく、明るい発光が認められ,欠陥が少ないことが明らかになった 次に、減圧MOVPE法を用いて,AlN/Sapphire下地基板上にSiドープAlGaN量子井戸構造の成長を行ったところ、井戸層幅が3nm以下で発光波長が短波長化する傾向がみられた。これはピエゾ電界による量子閉じ込めシュタルク効果の影響が大きいことが原因であると考えられる。また、量子井戸における最適な井戸層幅は1.5nmであり、最適な障壁層幅は7nm付近であることが明らかとなった。また、井戸層のAlN mol.分率は0.60で一定のとき、障壁層のAlN mol.分率が0.74のとき,最大の発光特性を示し、障壁層のバンドギャップの高さの最適化が発光強度の増大に大きく影響することが明らかとなった。
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