研究課題/領域番号 |
24360010
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高岡 義寛 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90135525)
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研究分担者 |
龍頭 啓充 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (20392178)
竹内 光明 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10552656)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 水クラスター / ハイドレート / イオンビーム / 構造解析 / サイズ分析 |
研究概要 |
二酸化炭素の水和クラスターイオンの加速エネルギーを減速電界法によって制御し、シリコン基板や銅基板に照射して、水和クラスターイオンの吸着・崩壊過程や表面反応過程の定量的評価を行った。このとき、水和クラスターの崩壊エネルギーは数eV以下、解離による水酸基の生成エネルギーは1 eV~10 eV程度、水分子の分解エネルギーは1分子当たり10 eV以上、注入エネルギーは100 eV以上であるので、水分子の数(クラスターサイズ)を乗じたエネルギーの値を参照し、水和クラスターイオンの加速エネルギーを制御した。また、二酸化炭素の水和クラスターイオンの表面反応過程については、現有のX線光電子分光(XPS)装置を用いて、イオン照射した基板表面の組成や化学結合状態を明らかにし、基板表面の化学的改質によって、特に銅基板表面のスパッタリングが促進されることを明らかにした。 次に、計算機シミュレーションを併用し、電子線回折装置を用いて、水和クラスターの基本構造である水素結合による水クラスターのネットワーク構造を解析した。また、ファンデルワールス結合によるアルゴンクラスターの結晶構造との違いを明らかにした。なお、回折パターンの解像度を上げるために、クラスタービーム強度の増大や電子線回折装置の蛍光スクリーンの改良、動作中の真空度の改善を行った。 次に、メタンハイドレートの生成実験に着手するために、メタンガス供給用のシリンダーキャビネットを整備した。本学の環境安全センターの指導により、法令に遵守したメタンガス供給系を組み上げた。さらに、ガスハイドレートを吸着してガス分子の閉じ込め・隔離を行うためには、基板を冷却する必要があるので、基板ホルダーを改良して、基板を液体窒素で冷却できるようにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたメタンハイドレートの生成については、シリンダーキャビネットの整備が遅れたため、次年度に行うことになった。また、電子線回折装置を用いたクラスターの構造解析については、装置の改良に時間がかかり、水クラスターの構造解析に留まっており、水和クラスターの構造解析は次年度に行うことにした。それ以外は研究実施計画にしたがって、概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は最終年度である。本研究の目的を達成するために、(1)メタンハイドレートの生成とガス分子の取り出し、(2)メタンおよび二酸化炭素の水和クラスターの構造解析と吸着過程の解明、(3)ガス分子の閉じ込め・隔離を行う。その結果、化石燃料の枯渇や地球温暖化に伴う世界的な環境・エネルギー問題の解決に一石を投じると共に、水クラスターイオンビームを用いた新たな水利用技術の開拓を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
メタンハイドレートの生成実験を行うには、メタンガス供給用のシリンダーキャビネットが必要で、当初、シリンダーキャビネットの整備費を確保していた。しかし、大学で年度末に整備したシリンダーキャビネットを流用できることになったので、次年度の繰越金とした。 現有の冷却機構付きの基板ホルダーを用いて氷薄膜の形成を行う実験で、薄膜形成が観察できる直線導入機の改良費に充当する予定である。
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