研究課題/領域番号 |
24360016
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
阿部 真之 大阪大学, 極限量子科学研究センター, 教授 (00362666)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 走査型プローブ顕微鏡 / 原子間力顕微鏡 / 光 / 光電変換 |
研究概要 |
平成25年度の研究計画としては、(1)測定試料基板を原子レベルで平坦な表面清浄化されたアルミナのプリズムを実現させ、(2)試料表面に光電変換材料をクラスタ構造で配置し、(3)原子レベルで光電変換現象を観察することを目指した。プリズム上のクラスタ構造の原子分解能測定には非接触原子間力顕微鏡(NC-AFM)を、ナノ構造体の電子状態の測定は走査型トンネル顕微鏡(STM)を、光によって励起された電荷の測定はケルビンプローブ力顕微鏡(KPFM)を利用する。具体的な研究の進め方としては、アルミナの短冊形試料を用いて、再現性のある試料清浄化条件を見出し、それをプリズムに適用したいと考えていた。また、光入射型NC-AFMの導入し清浄表面プリズム上でのナノ構造体の実現と電荷測定を行う計画であった。 短冊状のアルミナ試料の清浄表面測定において、R31xR31ユニットセル内部の個々の原子を、凹凸像としては初めて明瞭に観察することに成功した。一方、清浄表面作成には再現性が低いことがわかり、加熱によるアルミナ材料の還元やアルミな表面へのSi蒸着による表面の還元などを検討し実験を行った。その結果、清浄表面が作成できる頻度が向上した(実験階数がまだ少ないため、数値的には明確な改善が見られていない)。また、プリズムの清浄化に向けてプリズム用ホルダを開発した。このホルダの特徴は、小型のプリズムを固定しても光路を確保できる、プリズムの加熱を行うことができる、などの特徴をもつ。 また、光を照射しない状態での原子レベルでの実験も平行して進めた。その結果、AFM/STM同時測定の制御性を向上させ、力とトンネル電流の関係を明らかにすることができた。また、原子操作実験に関しては原子を移動させてクラスタ作成を行うことに成功した。今後、アルミナ表面の清浄化に関する問題を解決し、本研究課題の主テーマを直ちに実行する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
アルミナ表面の清浄化プロセスではスパッタとアニールを繰り返し行うが、実験を進めていくうちに試料作成条件に再現性があまりないことがわかってきた。パソコンを用いた自動制御で同じ条件での試料作成であっても、清浄表面が出来ない場合が多くあった。そこで、アルミナ表面に関する文献を調査し、またアルミナや触媒を研究している研究者の方々と議論をした結果、アルゴンイオンのような荷電粒子をアルミナに照射するには、アルミナ全体を還元の状態にしておくことが重要であることがわかってきた。このように、アルミナを還元するための様々な方法を試したことが、研究に遅れが生じた原因である。 一方、光を照射しない状態での原子レベルでの実験も平行して進めた。その結果、AFM/STM同時測定の制御性を向上させ、力とトンネル電流の関係を明らかにした。また、原子操作実験に関しては原子を移動させてクラスタ作成を行うことに成功した。したがって、アルミナ表面の清浄化に関する問題を解決することができれば、本研究課題の主テーマを直ちに実行できるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
アルミナを還元する具体的な方法として、1500Kの加熱、もしくはSiをアルミナ表面に蒸着する方法が有効であることが文献調査によってわかってきた。平成25年度にこの実験を行い頻度が向上しているようなデータが得られたが、実験回数がまだ少ないため、数値的には明確な改善が見られていない。そこで、平成26年度の初頭では、まず、これらの2つの方法の有効性を確認する。有効性を確認し、清浄表面作成の再現性が改善されたならば、同じ試料作成条件でプリズム表面の清浄化を試みる。次に、半導体探針を用いて、光から電荷へのエネルギー変換現象の検出を試みる。具体的には、プリズム表面にレーザー光を入射させ、プリズム表面にエバネッセント光を発生させる。この状態で半導体探針を近づけると、探針に電子ー正孔対が生成され静電気力が働くことが、これまでの実験でわかっている。さらに、プリズム表面にナノ構造体、例えばシリコンや色素などを蒸着し、電荷を高分解能で観察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
アルミナ清浄表面の作成条件の実験に遅れが生じており、そのための実験を平成25年度に集中して行わざるを得なかった。その結果、計画していたプリズム表面に光電変換材料を吸着させる実験を行うことができなかった。その実験に使用するための物品購入を行うことができず、結果として次年度使用額が生じた。 表面が清浄化されたプリズムに、エネルギー変換する材料、例えば、シリコンや増感色素などのクラスタを蒸着でとりつけ、光を入射したときのナノ構造体の測定を行うための準備に使用する。具体的には、プリズムにレーザー光を全反射させるときに必要な光学部品や、色素などの試料、蒸着用の真空部品を購入する。
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