研究課題/領域番号 |
24360020
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研究機関 | 大阪電気通信大学 |
研究代表者 |
生田 孝 大阪電気通信大学, 工学部, 教授 (20103343)
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研究分担者 |
日坂 真樹 大阪電気通信大学, 医療福祉工学部, 准教授 (40340640)
松谷 貴臣 近畿大学, 理工学部, 准教授 (00411413)
川崎 忠寛 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (10372533)
児玉 哲司 名城大学, 理工学部, 教授 (50262861)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 電子顕微鏡 / 走査型電子顕微鏡 / 電子光学系 / 球面収差補正 / 円環状対物瞳 / 3次元収束プロファイル / 電子ビーム露光 / 微細加工技術 |
研究概要 |
申請者らが行ってきた、円環状対物瞳を用いた電子顕微鏡(TEM, STEM)用長焦点深度線形結像振幅・位相分離観察手法の発展として、円環状対物瞳と近接補助電極を組み合わせて用いる、新しい発想の電子光学系球面収差補正技術の検証と特性の把握を試みる事が本研究第一の目的である。加えて、円環状対物瞳と補助電極の微細加工技術の確立、ビーム露光装置用(画像処理適用不可能)としての3次元収束特性の評価、像観察(TEM,STEM)用としての検知器・画像処理アルゴリズムの改良と3次元結像特性評価などを副次的な目的とする。 平成25年度においては、まず円環状対物瞳と近接補助円孔電極を用いる電子光学系用球面収差補正系において発生する電界を境界要素法によりシミュレーションし、電子軌道解析により球面収差補正に必要な条件を決定した。さらに円環状対物瞳の実機作製時に不可欠な支持橋の影響を解析し、その低減方法を検討した。 さらに円環状対物瞳と近接補助電極のクリーニング手法を検討するため、高エネルギーイオンと低エネルギーイオンを併用した表面処理技術の開発を行い、その諸特性を評価した。その結果、200eVの低エネルギーイオン処理を行うことで、原子レベルでの平滑化が可能であり、かつイオン照射によるダメージ層が2nm程度に低減化できることが明らかとなった。これらは本光学系の実用化に必須である。 STEMの像観察時には上記円環状対物絞りに加えて、試料後面に円環配置された検知器アレーの信号を個別処理、合成することで振幅・位相分離観察を行う。シンチレータ+光ファイバー、あるいはシンチレーションファイバーを用いた検知器アレーの検出効率や信号対雑音比の改善をはかった結果、金単結晶像やグラファイト格子像などの振幅・位相分離観察が実現できた。さらにこの像観察手法が走査型透過光学顕微鏡にも適用できることを実証済みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目下の所、当初予定に近い形で研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
目下の所、当初予定に近い形で研究を進めており、研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での課題等は特に生じていない。 平成24,25年度の収差補正効果の予備検討、実験結果を基に、平成26年度では微細加工された近接電極付き円環状対物絞りをSTEM鏡体に装着して評価実験を行う手はずである。収差補正効果の定量的評価を試みるとともに、本手法の実用化に向けた検討を進めて行く予定である。 一方、STEMでの振幅・位相分離観察用の検知器アレーについては、一層検出効率や信号対雑音比の改善をはかることで、実用的な振幅・位相分離観察方式として電子顕微鏡分野で確立させたい。加えてこの位相板を用いない振幅・位相分離観察手法を光学顕微鏡分野にも広げたい考えである。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究で使用している電子顕微鏡鏡体には高輝度電界放出型電子銃が装備されているが、電子銃内部の最重要部品であるWチップは通常の使用条件で1年弱-2年程度の寿命である。Wチップの破損に備え、1回当たり交換費用(250万円程度)を想定して基金助成金をキープしていたが、誠に幸いなことに平成24-25年度の2年間にはWチップの破損をきたすことは無く、順調に研究を進めることが出来た。 最終研究年度(平成26年度)中にWチップの破損をきたした場合には研究続行の為、優先してWチップの交換費用に充てる予定である。最終研究年度末の時点で幸いにしてWチップの破損が無かった場合には、電子顕微鏡鏡体の以後の使用に備えて鏡体のメインテナンス費用に充てたい考えである。
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