研究課題/領域番号 |
24360021
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
間瀬 一彦 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 准教授 (40241244)
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研究分担者 |
小澤 健一 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (00282822)
垣内 拓大 愛媛大学, 理工学研究科, 助教 (00508757)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 局所電子状態 / 電子励起ダイナミクス / 半導体表面 / 吸着分子 / 光電子分光 / オージェ電子分光 / コインシデンス分光 / 電子励起誘起イオン脱離 |
研究概要 |
分子が吸着した半導体表面は孤立分子とも半導体表面とも異なる構造、電子状態、反応性を示すため、基礎科学的に重要な研究対象である。また、「電極-有機分子-電極」という構造を持つ有機デバイス等の開発指針を与えるという観点からも重要である。例えば、分子/半導体表面の局所電子状態の理解は有機デバイスにおける電子(正孔)注入効率を高める上で重要である。 平成24年度は、オージェ電子-光電子コインシデンス分光法を用いてSi(111)-7×7、H/Si(111)-7×7(すべてのadatomサイトが水素化)、H2O/Si(111)-7×7(adatomサイトの半分に-OHが吸着し、Restatomに-Hが吸着)表面局所価電子状態の比較研究を行なった。オージェ電子-光電子コインシデンス分光法は個々の原子サイトを識別して、局所価電子状態に関する情報を得るという特徴を持つ。Si(111)-7×7清浄表面は、adatom、restatom、dimerなどから構成される。個々のSiサイトでは電荷量が異なるため、Si2p高分解能内殻光電子スペクトルにおいて、個々のサイトのsi2pピークを識別できる。我々はコインシデンス測定によりsi(111)-7×7、H/Si(111)-7×7、H2O/Si(111)-7×7について、adatomサイトに対応するSi-L23VVオージェ電子スペクトルを測定した。その結果、Si(111)-7×7表面のadatomサイトは金属的であるのに対し、H/Si(111)-7×7表面のadatomサイトは半導体的、H2O/Si(111)-7×7のadatomサイトは両者の中間の局所価電子状態を持つことを示す結果が得られた。 本実験装置の到達圧力を改善するために開発したNEGポンプに関して3件の特許出願を行なった。また、関連する論文1報、技術メモ1報を報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の交付申請書に記載した「研究の目的」のうち、「H/si、H2O/siなど、シリコン単結晶表面上に解離吸着した分子のsiサイトに由来するsi 2p光電子とsi Lvvオージェ電子のコインシデンス分光を行ない、個々のサイトの局所電子状態を解析する」についてはおおむね達成することができた。平成24年度の交付申請書に記載した「研究の目的」のうち、「電子-電子-イオンコインシデンス分光装置の改良」も進めており、一部の成果については論文を投稿中。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は電子-電子-イオンコインシテンス分光装置の改良を行なうとともに、研究対象をZnOまで拡張する。本研究では、H/ZnO(10-10)、H2O/ZnO(10-10)のZn-LVVオージェ電子とZn-2p光電子のコインシデンス分光測定を行なうことにより、個々の原子サイトの近傍の局所価電子状態を測定し、どの原子サイトまで金属的で、どの原子サイトまで半導体的であるかを解明する。O 1s、C 1sをイオン化するためにはBLllDの光量が不足することがわかったので今後は、Si 2p、Si 2s、Zn 3pの内殻に狙いを絞って研究を行なう。
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次年度の研究費の使用計画 |
電子-電子-イオンコインシデンス分光装置の改良のうち超高真空チェンバーの更新とコインシデンス分光器の改良の一部を平成25年度に行なうことにしたため、平成24年度分で4,503,646円の未使用額が発生した。未使用額と平成25年度分の合計6,703千円は、超高真空チェンバーやコインシデンス分光器部品、ZnO単結晶や試料ガスなどの消耗品を購入に使用する。また、研究支援員1名を雇用する。
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