研究課題/領域番号 |
24360021
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
間瀬 一彦 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 准教授 (40241244)
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研究分担者 |
小澤 健一 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (00282822)
垣内 拓大 愛媛大学, 理工学研究科, 助教 (00508757)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 表面 / 局所電子状態 / 電子励起ダイナミクス / 光電子分光 / オージェ電子分光 / コインシデンス分光 |
研究概要 |
平成25年度は、分子/半導体表面の個々の原子サイトを選別した局所電子状態、電子励起ダイナミクス研究のためのオージェ電子-光電子-イオンコインシデンス(EEICO)分光装置の改良を行なった。最初に、アパーチャーφ1mmのダブルパス同軸対称鏡型電子エネルギー分析器(DP-ASMA)、アパーチャーφ1mmのダブルパス円筒鏡型電子エネルギー分析器(DP-CMA)、飛行時間型イオン質量分析器(TOF-MS)により構成される高分解能EEICO分光装置の開発と性能評価、アパーチャーφ6mmのシングルパスASMA(SP-ASMA)、アパーチャーφ6mmのDP-CMA、TOF-MSから構成される高感度EEICO分光装置の開発と性能評価を行なった。しかしながら、高分解能EEICO分光装置はE /ΔE = ~36と高分解能が得られないにもかかわらず、感度が従来の半分に低下した。低感度EEICO分光装置はE /ΔE = ~13と低分解能にもかかわらず、感度は従来の1.5倍程度であった。そこで、アパーチャーφ1mmのSP-ASMA、アパーチャーφ1mmのDP-CMA、TOF-MSから構成される高感度EEICO分光装置を製作し性能を評価した結果、SP-ASMAの分解能はE /ΔE = 84 ± 4、DP-CMAの分解能はE /ΔE = 55 ± 3であった。本装置を用いてSi(111)-7×7のSiオージェ電子-Si-2s光電子コインシデンススペクトルを測定し、Si(111)-7×7のSi 2s内殻正孔の緩和過程としては、1)Si L1L23Vコスタークロニッヒ過程、価電子正孔の非局在化、 Si L23VVオージェ過程、2)Si L1VVオージェ過程の2種類があること、Si L1L23V過程とSi L1VV過程の分岐比は (96.7 ± 0.4) : (3.2 ± 0.4)であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
電子-電子-イオンコインシデンス分光装置の改良、Si(111)-7×7、H/Si(111)-7×7(すべてのadatomサイトが水素化)、H2O/Si(111)-7×7(adatomサイトの半分に-OHが吸着し、Rest atomに-Hが吸着)の表面局所価電子状態の比較研究までは達成した。しかしながら、CH3OH/Siなど、シリコン単結晶表面上に解離吸着した有機分子の研究、酸化亜鉛(ZnO)表面など他の半導体表面上に解離吸着した有機分子の研究、内殻励起からオージェ過程を経由してイオン脱離に至るダイナミクス研究、局所電子状態とダイナミクスの相関の解明は進んでいないため。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度はCH3OH/Siなど、シリコン単結晶表面上に解離吸着した分子の≡Si-、-O-、-CH3などの個々のサイトに由来するSi-2p、O-1s、C-1s光電子とLVVあるいはKVVオージェ電子のコインシデンス分光を行ない、個々のサイトの局所電子状態を解析する。試料はSi(100)あるいはSi(111)単結晶ウェハーを超高真空中で通電加熱して清浄化し、試料ガスを導入して解離吸着させることにより作製する。 さらに、研究対象を酸化亜鉛(ZnO)表面など他の半導体表面まで拡張して研究を行なう。 ZnOは透明導電性薄膜材料、発光デバイス材料として期待されているワイドギャップ半導体である(バンドギャップは約 3.37 eV)。我々は角度分解光電子分光法を用いた研究により、ZnO(10-10)単結晶表面上にH、H2O、CH3OHなどを吸着させると、表面のみが金属化することを見出した。また、この金属化の原因が、バンドベンディングにより伝導帯がフェルミ準位まで降りてくることであることを明らかにした[K. Ozawa, and K. Mase, Phys. Rev. B 81, 205322-(1-6) (2010).] 。本研究では、H/ ZnO(10-10)、H2O/ZnO(10-10)、CH3OH/ ZnO(10-10)のZn-LVVオージェ電子とZn-2p光電子、C-KVVオージェ電子とC-1s光電子、およびO-KVVオージェ電子とのコインシデンス分光測定をそれぞれ行うことにより、個々の原子サイトの近傍の局所価電子状態を測定し、どの原子サイトまで金属的で、どの原子サイトまで半導体的であるかを解明する。 さらに得られた結果を取りまとめて、真空・表面科学合同講演会、日本物理学会年会等で発表する。また、論文を執筆し、英文誌に投稿する。
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次年度の研究費の使用計画 |
電子-電子-イオンコインシデンス分光装置の改良のうち超高真空チェンバーの更新は平成26年度に行なうことにしたため、直接経費次年度使用額3,118,603円が生じた。 電子-電子-イオンコインシデンス分光装置の改良のうち超高真空チェンバーの更新を行なう。
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