研究課題/領域番号 |
24360023
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大津 元一 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70114858)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ガリウム燐 / 発光ダイオード / 亜鉛 / バンドギャップ / pn接合 / フォノン / アニール / スペクトル |
研究概要 |
昨年度の成果を更に発展させ、ガリウム燐(GaP)製の発光ダイオードの作成方法を工夫し、更に優れた性能を得た。すなわちまず高エネルギー側の発光の取り出し効率向上のための研究を行った。ドーパント濃度プロファイルを測定した結果、n型GaP基板に700keVで亜鉛(Zn)の注入を行った場合、表面近くにもn 層が形成されていることが分った。このようにnpn接合が形成されていることから正方向、逆方向に電流を流して発光スペクトルを得ることができるようになった。その結果、表面近くのpn接合での発光強度(逆方向電流による)はバンドギャップより高エネルギー側において大きい事がわかった。しかし不純物の濃度差などの要因から全発光強度は正方向電流の場合の方が大きい。これは接合面での濃度勾配をより急峻にすることにより高エネルギー側の光の取り出し効率と全発光強度の両方を上げることが出来ることを示唆している。そこで次にn型GaP基板にZnを300keVでイオン注入した。結晶の内部に十分な距離だけ侵入できるエネルギーであったので、Znの分布は深さ170nmにピークを有し、50nmと300nmにpn接合が形成されるようなガウス分布となった。深さ方向にはnpn構造になっていて、バイアスの方向によって活性化されるpn接合が変わるここで分かった。ここで300nmにおけるpn接合に対して順方向電圧をかけながらフォノン援用アニールを行い、バイアスの方向によるスペクトルの変化を観測した結果、フォノン援用アニール時に不純物分布変化と光の吸収・散乱との関連が明らかになった。電流の変化による発光強度の変化を測定した結果、電流の強度に依存せず、スペクトル形状のバイアス依存性が維持されることがわかった。また、npn構造を利用し、順方向、逆方向の電圧を交互に印加することにより発光色をスイッチングできることがわかった。これは本発光デバイスの新しい応用可能性を示唆する結果として重要と思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予想していなかったnpn構造が形成できたた事、その結果スペクトルのスイッチングが可能となった事は、基礎研究のみならず応用技術の発展にとって極めて優れた成果と考えられる。これらは独創性・先駆性に富む。
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今後の研究の推進方策 |
(今後の推進方策) 予想以上の優れた成果が得られたので、これを基に今後は当初の研究計画に沿い、かつ必要に応じて発展させて研究を推進する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は研究が予想以上に順調に推移し、半導体材料、薬品を効率よく使用することができた。 従って、当初予想していた消耗品費の支出を低く抑えることができた。 本研究の最終年度にあたり、研究を加速し、当初計画以上の成果を上げるため、消耗品の購入、さらには論文発表に掛かる費用に有効利用する。
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