研究課題/領域番号 |
24360023
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大津 元一 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70114858)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 半導体 / 発光ダイオード / フォノン / アニール |
研究実績の概要 |
GaP はバンドギャップが2.26eV であり、これは視感度のピークに近い546nm にあたる。また低価で良質な結晶を入手できる。しかし間接遷移型半導体であるので発光にはフォノンの介在が必要であり、一般的に発光効率は直接遷移型半導体と比べ極めて低い。これに対し本研究ではこれまでにドレスト光子フォノン(DPP)援用アニールの手法を提案し、ドレスト光子フォノン準位を介する遷移を用いることで、LED を実現した。 DPP 援用アニールの原理は、まず外部から光を照射しながら電流を流すことで半導体pn 接合界面に熱を発生させ、不純物分布をランダムに変化させる。局所的な不純物分布がDPP 準位を介する発光に最適になると誘導放出が起きるのでそのようなサイトでは相対的な冷却効果がある。このようなサイトでは発熱が抑えられるので、不純物分布が保持される。長時間の加工後、界面全体が発光に最適な不純物分布を取る。加工原理より考えると外部から与える電流と光強度を変化させるとDPP 援用アニールの効果に変化が生じることが期待される。今年度はその発光の加工条件依存性について調べた。n 型GaP 基板に対するZn イオン注入で素子を作製し、条件を変えながら波長532nm のレーザでDPP 援用アニールを行った。その結果加工時の電流と照射光の間には最適なバランスが存在することがわかった。これについて次のように解釈した:①DPP 生成に関与しない余剰光子が増えるが、それらは非輻射緩和を通じて局所的にエネルギーを与える。②余剰電子が増えると、それらは散乱によりエネルギーを与える。 ①と②共に相対的な冷却の効果が弱くなるのでDPP 援用アニールによる最適分布形成を阻害する働きを持つ。以上により、DPP 援用アニールによる発光素子の作製においては、電流と光強度に最適なバランスが存在することが見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
GaP発光ダイオードからの発光強度が著しく増加し、また発光は超範囲も拡大した。またドレスト光子フォノン援用過程を用いたアニール加工の効率が注入電流、照射光強度、さらには基板温度に依存することがわかり、その最適条件が見出された。また、これは二準位理論モデルにより説明がつくことがわかり、今後の発光ダイオードの製作条件を決めるのに大きく寄与するからである。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度であるので、これまでの結果を集大成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
製作の最適条件を確認するため、アニール加工を継続する。そのために必要な材料などを購入する為である。
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次年度使用額の使用計画 |
半導体材料など、発光ダイオード製作に必要な材料を購入する。また成果の外部発表に関わる費用に充てる。
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