研究課題/領域番号 |
24360024
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
枝川 圭一 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (20223654)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | フォトニック結晶 / フォトニックアモルファス / フォトニックバンドギャップ / テラヘルツ帯 |
研究概要 |
本研究では、周期性等の長距離秩序をもたないにも関わらず3次元フォトニックバンドギャップ(3D-PBG)を形成する「フォトニック・アモルファス・ダイヤモンド(PAD)」を用いた全く新しいタイプの光制御素子の開発をめざしている。具体的にはi}テラヘルツ帯(λ~300μm)、光波帯(λ~3μm)でPAD構造を作製すること、ii)PAD中に組み込んだ点欠陥共振器、線欠陥導波路等の光制御素子の基本性能を明らかにして設計指針を確立すること、iii)PADにおける3D-PBG形成機構の理論解明を行うこと、を目的としている。 本年度は、i)とiii)の研究を遂行した。i)について、テラヘルツ帯PADは以下の方法で作製に成功した。まず本年度購入したマイクロ光造形装置を用いてロッド長さ285μm、外形3mm×3mm×2mmの構造体を作製した。この装置は標準的にはアクリル系光硬化性樹脂を材料とするが、これでは3D-PBG形成のための誘電率コントラストが不十分なので、樹脂中に粒径約100nmのアルミナ粒子を均一に分散させた。造形後に600℃、2hの焼鈍により樹脂をとばし、さらに1500℃、2hでアルミナ粒子の焼結を行った。これによりアルミナロッドからなるPAD構造の作製に成功した。走査型電子顕微鏡でロッド部を観察したところ、アルミナ粒子が良好に焼結できていることがわかった。但し、若干空隙が存在しており、今後終結条件を工夫して緻密なロッドからなる構造体の作製をめざす。光波帯のPADについてはドイツNanoscribe社に作製を依頼した。材料はカルコゲナイドガラス(誘電率約6)で、この誘電率はPADがPBGを形成するぎりぎりの値であることがFDTD計算によりわかっている。いまのところ作製に成功していない。 iii)についてはFDTD法によりギャップ直上と直下の光状態を詳細に調べ、ギャップを挟んだ2つのバンドが誘電体バンド、空気バンドの特徴を明確にもつことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的の重要項目の一つであるテラヘルツ帯PADの作製に成功した。またPADにおける3D-PBG形成機構の理論解明についても大きく進展した。
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今後の研究の推進方策 |
テラヘルツ帯PADについては、電磁波透過スペクトルの測定により、3D-PBG形成を実証する。光波帯PADについては引き続き作製を試みる。特に粘弾性相分離による作製については形成条件をより詳細に検討する。FDTD法による共振器、導波路の設計を行い、実際に作製を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
テラヘルツ帯PAD試料の作製が当初計画より順調に進み、費用に余裕が発生した。本余剰分は25年度に使用し、方位やサイズを変えたテラヘルツ帯試料の作製・および光波帯PADの作製費用に充当する。
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