白金ナノクラスター合成時における錯体形成過程を明らかにするため、フーリエ変換赤外分光等の振動分光法を用いて解析を行った。その結果、白金の錯体が形成されるPAMAMデンドリマー内のアミド基を特定することができた。また、合成し、メルカプト酢酸によりリガンド交換を行った緑色蛍光性白金ナノクラスターの拡散定数、濃度を測定するため、蛍光強度揺らぎからそれらパラメーターを決定できる蛍光相関分光システムを構築した。その結果、拡散定数が(2.83±0.79)×10-10 m2/s、濃度が0.443±0.088 nmol/Lとなることを示した。さらに、得られた拡散定数から緑色蛍光性白金ナノクラスターの流体力学的半径が0.87±0.24 nmであることを明らかにした。 つぎに、ポリエチレンイミン(PEI)をテンプレートとして用いて合成した白金ナノクラスターの電子状態を、X線光電子分光法を用いて、解析した。得られたXPSスペクトルでは、4f7/2のピークが72.4eVに4f5/2のピークが75.9eVに観察された。この結果から、合成した白金ナノクラスターの酸化状態は0価であり、十分に還元されていることを見出した。また、透過電子顕微鏡を用いて、青色蛍光性、緑色蛍光性、黄色蛍光性の白金ナノクラスターの構造をそれぞれ観察した。その結果、発光波長が長くなるほど、ナノクラスターサイズが大きくなることを明らかにした。さらに、電気化学アナライザーを用いて、白金ナノクラスターの酸化還元電位をサイクリックボルタンメトリー(CV)法により測定した。その結果、白金ナノクラスターは可逆的な酸化還元反応を有することを示した。また、ナノクラスターサイズが大きいほど、酸化還元のピーク電流が大きく、触媒作用が高いことを明らかにした。
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