研究課題/領域番号 |
24360028
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
井須 俊郎 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 特任教授 (00379546)
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研究分担者 |
森田 健 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30448344)
北田 貴弘 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 特任准教授 (90283738)
盧 翔孟 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 特任助教 (80708800)
熊谷 直人 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 特任講師 (40732152)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 量子ドット / 微笑共振器 / 超高速全光スイッチ / 非線形光学応答 / キャリア緩和 / MBE,エピタキシャル成長 / 化合物半導体多層膜 / 波長変換 |
研究実績の概要 |
本研究は、半導体多層膜三結合微小共振器構造と半導体量子ドットを用いて、高効率な四光波混合を利用した超高速面型波長変換素子を実現することを研究目的とし、結合光共振器構造の作製、その波長変換特性の評価、量子ドットの特性改善、についての研究を行うものである。 前年度までに、高効率な波長変換のためには三結合共振器構造の三つの共振器層の光学光路長が等価であることが重要であることを明らかにし、また量子ドットの利用による非線形性の向上を図るため、InAs量子ドット含む等価な共振器層を持つ三結合共振器構造の作製を行った。H26年度は、その試料の四光波混合信号の時間分解測定、およびスペクトル測定を行い、波長変換特性について調べた。また、InAs量子ドットの特性向上を目指して、相分離を応用した新たなSKモードによる量子ドット形成法であるAlAsキャップ層を導入したInAs量子ドットについてその発光特性を調べた。 AlAs共振器層にわずか一層のInAs量子ドットを含む三結合共振器構造から、厚さ約110nmのGaAs共振器層の場合とほぼ同等の超高速応答を示す四光波混合信号が観測され、量子ドット層は大きな非線形効果を示すことが確認できた。しかしながら、スペクトル測定では、縮退四光波混合の信号のみが観測されており、GaAs共振器層の場合に観測された波長変換信号が観られなかった。これは、量子ドットによる吸収の影響で、縮退四光波混合信号は可飽和吸収によって透過するが、波長変換光は吸収が大きいことによるものと分かった。 AlAsキャップ層を導入したInAs量子ドットでは、濡れ層からの発光が減少し、量子ドットからの発光特性が向上した。InGaAsバリア層への依存性、発光の温度依存性などその種々の特性を明らかにした。これらの結果から量子ドットの濡れ層を介してのキャリア散逸についての知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画にそって、三つの共振器層の実効光路長が等しい量子ドット含む三結合共振器構造の試料の四光波混合信号の測定を実施した。量子ドットが有用な非線形材料であることを確認し、必要な特性についての知見を得た。また量子ドットの特性改善のため、AlAsキャップを持つInAs量子ドットを作製し、その発光特性の評価を行った。波長変換特性の評価のため、独立した二波長での四光波混合信号測定の光学系の構築を順調に進め、また、次年度計画の実施のため、吸収のない量子ドットを含む三結合共振器構造の作製準備を整えるとともに、その試料に対する波長変換信号の評価実験の準備を整えることができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画にそって本研究課題を遂行する上での実施項目として、結合光共振器構造の設計と結晶成長による作製、量子ドットの非線形媒質としての特性改善、非線形光学応答測定による波長変換の評価、の三つを引き続きおこなう。 三結合光共振器構造については、これまでの研究結果から量子ドットの可飽和吸収特性が非線形光学信号に大きな影響を持つことが明らかになったので、共振器モード波長が透明領域となるような量子ドットを三結合共振器構造に埋め込む構造を中心に、昨年度までの試作結果とシミュレーションを参照しながら、作製条件の総合的な最適化を進め、波長変換信号の評価のための適正な三結合共振器構造の作製を行う。 量子ドットの特性改善については、AlAsキャップ層の導入したInAs量子ドットについてその特性評価に引き続き取り組むとともに、さらにドット形状の均一性の向上、量子ドットの密度の向上、また発光波長など発光特性の制御に努める。波長変換特性の評価については、二つのスペクトル制限光学系を含む時間分解測定光学系を用いて、独立した二波長のパルス光の照射を行うことにより、四光波混合過程の波長変換特性を評価する。また、試料の不均一性の影響等を評価することができるようにするため、照射領域を十ミクロン程度の領域に絞れるような顕微光学系の構築を引き続いて行い、測定系の適正化・高精度化を図り、波長変換信号特性評価の精密化を図る。 量子ドットを含む三結合共振器構造による波長変換特性に関しての成果、および、量子ドットの特性評価についての成果を取りまとめ、学会発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
直接経費次年度使用額70,662円は年度末近くに急遽実験系の改良のために購入した部品の決済処理が年度内に完了できなかったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度直接経費の物品費と合算する。次年度の直接経費の物品費は、上記の推進方策に基づいて、主に、試料の作製のための原材料、寒剤、プロセス材料、測定光学系の構築のための部品、等の購入に使用する計画である。なお物品費以外は学会発表のための旅費、学会参加費としてのその他経費、実験補助の謝金を計画している。
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