研究課題
本研究の目的は、カメラの露光時間の長い極微弱光下において、10 桁消光できる地球型系外惑星の直接観測装置を開発し、望遠鏡搭載の目処を得ることにある。望遠鏡全体で生じる変化の速い波面誤差を瞳面波面センサーで計測し、コロナグラフ(恒星光を消光して惑星光を検出する光学系)で生じる非常に変化の遅い波面誤差を焦点面カメラで計測し、それらを合わせて制御できる、高消光なダブル波面計測制御光学系を新たに開発する。本研究の開発実験光学系は、光源部、非対称ナル干渉計部(UNI)、補償光学部、コロナグラフ部(焦点面カメラを含む)、から成り立っている。光源部は、迷光や振動から隔離され、広帯域特性が得られるよう、数個の光源を1本のシングルモードファイバーにカップリングして引き込んでいるが、安定化のための改良を行った。UNI部は、4分割位相マスクコロナグラフの特殊な用法によって高い安定性の非対称ナル干渉計の実現が可能になっているが、フォトニック結晶によるマスクの導入により、コンパクト化が進められるようになった。コロナグラフ焦点面での波面センシングによる補償光学制御系の開発が進み、焦点面の多数点に対して繰り返し制御が行えるようになり、最大で消光比が1E-7に達した。さらに、焦点面の広い範囲に対する効率的制御法を開発中である。これらを用いて、ダブル波面計測制御系の開発を進めた。可変形鏡の表面形状の高精度化、および、波面精度等の特性の優れた偏光素子の調査も継続した。
3: やや遅れている
本研究の開発実験光学系は、光源部、非対称ナル干渉計部(UNI)、補償光学部、コロナグラフ部(焦点面カメラを含む)、から成り立っている。各部の基本動作および性能は必要条件を満たす状態にまでなっており、現段階での達成度としては十分である。しかし、各部においては、より高いパフォーマンスの可能性を検討して改良を進めているところであり、全系を統合して高消光なダブル波面計測制御光学系としての性能を追求するのがが多少遅れている。個別にみると、光源部は、本光路とは隔離された別の机上の小定盤において4つのレーザー光源をファイバーに導入しているが、1週間以上経過すると多少の調整が必要なため改良を進めてきた。そして、さらなる改良を予定している。本光路上に導かれたファイバー出力を平行光として射出するところでは、効率と消光比に与える影響について精査してパラメーターを変更しようとしている。UNI部は、高精度のマスクが入手でき、高性能の非対称ナル干渉計が実現できる見通しであるが、従来のものとパラメーターの微妙な違いがあり、全光学系のパラメーターも変更して改良できるかを検討している。焦点面波面センシングによる補償光学制御では、アルゴリズムがまだまだ発展中であり、より速く安定に高い消光比へ到達する可能性が高い。このように、それぞれの部分に改良・発展の可能性が含まれているため、それらを極力高精度化したのち、各部を統合して開発実験光学系全体およびダブル波面計測制御系を完成させ、より高い消光比を得るとともにその有効性を示す。
本研究の開発実験光学系である、光源部、非対称ナル干渉計部(UNI)、補償光学部、コロナグラフ部(焦点面カメラを含む)の、それぞれの部分について改良を行い、極力高精度化したのち、各部を統合して光学系全体およびダブル波面計測制御系を完成させ、より高い消光比を得るとともに2重の制御の有効性を示す。光源部は、レーザー光をシングルモードファイバーで導くことで、主光学系の温度安定化と迷光遮断を図っており、比較的高いカップリング効率を得ているが、入力部分の安定化対策をさらに施す。UNI部は、高精度の光学素子に合わせた光学系に変更する。また、UNI部の光学系変更に伴って、全光学系についてもパラメーターの見直しと再構築を進め、同時に安定化・高精度化対策も進める。光学素子、特に、偏光素子について、調査・サンプル評価等によって高精度なもののサーチを行い導入を進める。補償光学部とコロナグラフ部は、光学的なマッチングに配慮しながら配置の再調整を行い、焦点面カメラからのフィードバック制御アルゴリズムを改良し、安定高効率で広範囲高消光比を追求する。なお、UNI部およびコロナグラフ部は、渦マスクやリヨマスク型の可能性も検討する。上記のように、各部についての高性能化を進めたのち全光学系および制御系を用いて、瞳面波面センサーと焦点面カメラによる計測を合わせて制御する、高消光なダブル波面計測制御光学系の開発を推進する。また、国内外の会議や論文への発表等により成果を配信周知する。また国際協力研究の可能性も追求する。
3月納品で支払いが4月になったため。既に全額発注納入済みで、実質上は次年度使用額は残っていない。次年度は、次年度の予算に基づいて、本研究の開発実験光学系の各部分についての高精度化、統合した全光学系制御系による開発実験、等により研究を遂行する。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (12件) (うち招待講演 1件)
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