研究課題/領域番号 |
24360033
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究機関 | 日本電信電話株式会社MTT物性科学基礎研究所 |
研究代表者 |
俵 毅彦 日本電信電話株式会社MTT物性科学基礎研究所, 量子光物性研究部, 主任研究員 (40393798)
|
研究分担者 |
尾身 博雄 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 量子光物性研究部, 主任研究員 (50257218)
後藤 秀樹 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 量子光物性研究部, 主幹研究員 (10393795)
寒川 哲臣 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 量子光物性研究部, 主席研究員 (70211993)
倉持 栄一 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 量子光物性研究部, 主任研究員 (10393802)
足立 悟 北海道大学, 工学研究科, 教授 (10221722)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | STIRAP / 酸化エルビウム / MBE成長 / エネルギー移動 |
研究概要 |
STIRAPを効率的に実現するために、H24年度は(1)Er_2O_3結晶薄膜の高品質化、および(2)古典光パルス対によるSTIRAPのためのEr_2O_3結晶薄膜の各光学物性評価を行った。 (1)Er_2O_3結晶薄膜の高品質化: 従来のEr_2O_3結晶薄膜は単結晶ではなく、ドメイン成長した微結晶の集合体(多結晶)である。ドメイン境界はキャリアの非発光トラップとなるため、本年度はEr_2O_3結晶ドメインの拡大化を図った。Er_2O_3結晶の格子定数はsi(111)の格子定数の2倍と整合するために、良質な結晶が得られる事が期待できる。MBE法を用いてsi(111)上にEr_2O_3を膜厚約100nmで成長したところ、成長温度715℃において完全なエピタキシャル成長薄膜が得られた。これらは成長中のRHEEDおよび成長後の断面TEM像から確認された。これによりドメイン境界の無い良質なEr_2O_3結晶薄膜を得る事に成功した。 (2)古典光パルス対によるSTIRAPのためのEr_2O_3結晶薄膜の各光学物性評価: H24年度ではEr_2O_3単結晶薄膜でSTIRAPを実現するための基礎的な光学物性、特に準位間エネルギー移動レート、縦緩和時間、不均一幅、g因子とスピン選択則破綻の程度について評価を行った。まず4KにおけるEr_2O_3単結晶薄膜のPLE測定の結果、^4I_<13/2>および^4I_<15/2>の各Stark準位を同定した。また均一な結晶場が実現されている事により、不均一幅が約200μeVと量子ドット程度に狭いことが分かった。さらにサイトおよびStark準位選択励起によるPLおよび寿命測定を行った結果、縦緩和時間は約150μs、Erイオン間での共鳴エネルギー移動が数μsで生じている事が明らかとなった。ただしSTIRAPは数nsで操作を完了できる事が理論解析から分かっており、この共鳴エネルギー移動はSTIRAPに影響しない。また磁場中でのPL測定を行った結果、実効的なg因子は6.62と比較的大きな値を示したが、Er間距離が非常に近い(~2A)ことから状態の混同が生じスピン選択則が破綻していることが分かった。エネルギー移動およびスピン選択則破綻の抑制のために、今後結晶中でのEr間距離を制御する必要がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初目標であった古典光パルス対によるSTIRAPは到達できなかったが、エピタキシャルEr_2O_3単結晶薄膜の作製に成功した事により、STIRAP実現のための光学物性を詳細に明らかにすることができ、また必要な実験パラメータを得る事ができたため。
|
今後の研究の推進方策 |
・Er_2O_3単結晶薄膜におけるEr間距離の制御と古典光パルス対によるSTIRAPの実施・横緩和時間の評価 ・Er_2O_3埋め込み型Siフォトニック結晶構造の作製プロセス検討
|