X線透過格子を用いるTalbot(-Lau)干渉計を用いる位相イメージングは、軽元素からなる弱吸収物体に対して有効とされる。本課題は、これまで静的な試料を時間をかけて撮影する用途が多かったX線位相イメージングを、動的観察を可能とする段階に高めることを目的とした。 高分子ブレンド試料の相分離現象を時系列に三次元高感度観察を行うことを目的として開発した試料加熱撮影装置をKEKのPF・BL14Cに設置し、白色放射光で動作させるX線Talbot-Lau干渉計を用いた時分割X線位相CT計測に成功した。単分散のPMMAとポリスチレンの混練体を準備し、これをアルミ管内で180℃で過熱した状態で連続して位相CT計測を行った。一回のスキャンは5秒である。細かい相分離構造が時間を追って粗大化してゆく様子を同一試料で追跡することに成功した。 また、動的現象の観察対象例として選んだダイラタント流体については、水とコーンスターチの混合体について外部からの力学的衝撃下でのvisibility画像の変化をmsの時間分解能で撮影した。外力変化と画像コントラスト変化の相関を定量的に調べることに成功した。この結果はダイラタント現象のメカニズムに関する考察に大変有効なもとなった。 放射光のパルス性を利用したストロボスコピックX線位相イメージングの予備的検討について述べる。これまで、CMOSカメラの機能を利用したアプローチで10μs程度の時間分解能による撮影に成功している。KEKのPF-ARではシングルバンチ運転を行っており、約1.25μsおきにX線パルスが放射されるので、これを利用すればより高い時間分解能が実現できる。そこで、ストレージリングのRF信号に同期した超音波を試料に加え、X線位相イメージングを試みた。十分な位相信号を得るには至らず、試料環境の面で改善が必要であるが、撮影システムとしては動作することを確認した。
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