研究課題/領域番号 |
24360036
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
小椎八重 航 独立行政法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 上級研究員 (20273253)
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研究分担者 |
森 道康 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 先端基盤研究センター, 研究副主幹 (30396519)
筒井 健二 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究センター, 研究主幹 (80291011)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 絶縁体金属転移 / Skyrmion / 非共鳴・非弾性X線散乱 |
研究概要 |
計画2年目となる平成25年度では,初年度の蓄積と成果を基礎として,研究を飛躍的に推進することが出来た.とりわけ進歩が目立ったのが,光誘起絶縁体金属転移の実時間ダイナミクスの物理に基づく新しい光電変換の理論的研究と,磁性体における磁気テクスチャの励起と緩和の実時間ダイナミクスに関する研究である.前者は,研究代表者が長期にわたって推し進めてきた研究に基いた,光電変換デバイスの理論設計であり,今年度論文として出版された.後者は本計画のひとつの大きな柱をなすものである:ある種の磁性体では,磁気モーメントの長距離構造が織り成す非自明なトポロジーをともなう実体として,skyrmionが構成される.これは,磁場や温度を変数としてらせん構造や強磁性構造などの自明なトポロジーをともなう磁気構造の狭間に現れる.すなわち,skyrmionの出現は,トポロジー的な転移として特徴付けられる.この磁気テクスチャのトポロジー的転移の背後にある物理を,理論的に運動方程式を解くことにより,実時間ダイナミクスとして明らかにした.この研究の進捗は,日本物理学会やアメリカ物理学会等での口頭発表として報告された.また,温度勾配がもたらすskyrmionの駆動について,他のグループとの共同研究も行った.こうした,磁気テクスチャの励起と緩和に関する観測の理論も本計画の範疇となる.すなわち,本計画で推し進めてきた磁性体と超伝導体からなるジョセフソン接合における磁気ダイナミクスと伝導の理論が,まさに,観測の理論に自然に展開できることが解ってきたのである.この研究は発表に向けて最終段階に入っており,次年度には論文として発表できるよう準備を進めている.また,非弾性X線散乱による電子構造および磁気構造の観測に関する理論も進展をみせ,銅酸化物に加え,金属クロムの磁気ダイナミクスの物理を展開する理論的研究に道を与えた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
相関電子系の励起と緩和のダイナミクスに基づき,新たな光電変換デバイスの基礎理論を構築し論文として発表することが出来た.さらには,この励起と緩和の物理を,磁性体のトポロジーの物理と結びつけ,新たな研究分野への飛躍をもたらすことに成功した.
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今後の研究の推進方策 |
本計画のこれまでの研究成果に基づき,相関電子系の励起と緩和のダイナミクスの理論研究を推し進めていく.とりわけ,磁性体のトポロジーの物理,その励起と緩和のダイナミクス,さらにはその観測理論の研究に注力していく.初年度に続いて構築してきた,相関電子系の励起と緩和のダイナミクスを取り扱う並列計算アプリケーションと,これが与える膨大な数値データの解析,そしてその保存管理のための機器導入に,今年度生じた直接経費未使用額および来年度の直接経費の一部が投入される.
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次年度の研究費の使用計画 |
本計画では数値計算機を導入し,研究を進めてきた.この計算機で使われるCPUはintel社製であるが,昨年からそのアーキテクチャが一新され,あわせてコンパイラーも大きくその仕様を変えてきた.この仕様変更にともなう価格改定を主な原因として,計算ノードの導入計画の変更を余儀なくされ,都合,差額が生まれ,次年度使用額が生じた. 本計画で構築してきた,相関電子系の励起と緩和のダイナミクスを取り扱う並列計算アプリケーションと,これが与える膨大な数値データの解析,そしてその保存管理のための機器導入に,今年度生じた直接経費未使用額および来年度の直接経費の一部が投入される
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