研究課題/領域番号 |
24360038
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中村 佳正 京都大学, 情報学研究科, 教授 (50172458)
|
研究分担者 |
木村 欣司 京都大学, 情報学研究科, 准教授 (10447899)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 応用数学 / アルゴリズム / 特異値分解 / 大規模スパース行列 |
研究概要 |
大規模スパース行列の特異値分解の前処理として、コンパクトWY表現を用いたブロックHouseholder変換による直交化法をLanczosベクトルの再直交化に適用した。修正Gram-Schmidt法より計算量は多いが、行列・行列積計算が増えるため演算自身は高速化され、十分な高速性とLanczosベクトルの直交性を保持しながら与えられた大規模スパース行列のブロック上2重対角化が可能となった。 平成25年度は、まず、ブロック上2重対角行列の再直交化つきブロック逆反復法による特異ベクトル計算を考察した。逆反復法による固有ベクトル計算における再直交化計算では、従来、ベクトル演算や行列-ベクトル乗算といった並列化粒度の比較的小さい演算を用いたアルゴリズムが中心であったが、博士課程学生の石上裕之氏も加わって開発した再直交化付きブロック逆反復法は、行列乗算中心の実装が可能な同時逆反復法を基にした大粒度の並列性を持つアルゴリズムである。この結果、共有メモリマルチコアプロセッサシステム上での数値実験において、逆反復法や同時逆反復法と同等の計算精度のもとで、提案アルゴリズムによる高速な並列計算が確認された。 また、ブロック上2重対角行列や三角行列を含むブロック帯行列の特異値計算をGivens変換の繰り返しによる拡張oqds法で行う新しい算法の研究を開始し、収束加速のための原点シフトの与え方や収束判定基準の検討を行った。その結果、修士課程学生の荒木翔氏との共同研究によってAlgebraic shiftによるoqds法はGerschgorin shiftより高速に収束することがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スパース行列の上2重対角行列への前処理をブロックHouseholder変換とBLASによって高速化し、さらに、得られたブロック上2重対角行列をブロック二分法とブロック逆反復法によって高速に特異値分解するという全体計画のうち、順番が入れ替わっているが、まずは、ブロック逆反復法の並列実装された。ブロック二分法に代わる高精度な特異値計算法として拡張oqds法の研究が進んだ。これらのことから、研究計画は概ね当初の計画通りに進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
研究計画に沿って、ブロック上2重対角行列の特異値計算を行うブロック二分法を並列実装する。また、ブロック上2重対角行列への前処理を、ブロックHouseholder変換によるではなく、再直交化つきブロックGolub-Kahan-Lanczos法(RBGKL法)によって一層の高速化をはかる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本研究では、GPU上での高速特異値分解計算を目的のひとつとしている。このため、インテル社のプロセッサ内蔵グラフィックコントローラの最上位モデルであるIntel Iris Graphics及びIntel Iris Pro Graphicsについては常に関心をもって検討対象としてきたが、平成26年1月にIntel Iris Pro Graphics 5200を内蔵するIntel Core i7th 4700Rプロセッサを搭載した汎用PCの発売が予告された。年度末の備品購入期限が迫っており、平成26年度早々に購入することとした。この結果、前年度に2,100千円を繰り越したが、ほぼ同額の2,380千円を次年度に繰り越すことになった。 具体的な製造会社を特定してはいないが、例えば、GIGABYTE社のGB-BXi7-4770Rプロセッサを搭載したGIGABYTE BRIX Proは上記の条件を満たす計算機環境である。このPCを購入して、最新のGPU環境上の高速計算に挑戦する。
|