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2012 年度 実績報告書

タイリング工学:目標図形近似タイルの計算法とその応用

研究課題

研究課題/領域番号 24360039
研究種目

基盤研究(B)

研究機関明治大学

研究代表者

杉原 厚吉  明治大学, 大学院・先端数理科学研究科, 教授 (40144117)

研究分担者 今堀 慎治  名古屋大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (90396789)
研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2016-03-31
キーワードタイル / 図地反転アート / エッシャー化 / フットステップ錯視 / 単一タイルアート / タイリング可能条件 / 格子パターン
研究概要

本研究の目的は,今まで熟練した人の勘に頼って作られてきたタイリングパターンを計算機支援型の設計法に置き換え,タイリングを芸術から工学へ昇華することであった,この目的に沿って次のような研究実績を上げることができた.
単一タイルによる平面分割に関しては,1種類の入力図形が与えられ,その図形にできるだけ近い図形によるタイリングを求めるエッシャー化タイリング問題に関して,小泉と杉原の手法に数学的および計算実験による再考察を行い,さらなる改良について検討を行った.提案した手法のひとつに,入力図形を多角形によって近似する際に,多数の近似多角形を考えることで,より良い解を目指す手法がある.ここで,入力図形の近似多角形は無数に存在するが,幾何的な条件による候補の絞り込み,局所探索にもとづく効率的な探索,類似の行列に対する固有値計算の際の計算効率の向上といったアイデアを組み込むことで,計算効率と解の精度の両面で優れた解法を設計した.計算実験によって提案手法を評価したところ,実用的な計算時間で,既存解法と比較してさらに良質のタイリングを生成できることを確認した.
図地反転タイリングパターンに関しては,すでに開発済みのエッシャーの「空と水」風のパターンの自動生成法を,グラデーションがなくても図地反転ができるように改良し,多くのタイリング作品を試作した。その一部は,数学分野の商業雑誌の表紙パターンとしても採用されるに至っている.
さらに格子パターンの上をタイルが等速直線運動するだけであるにもかかわらず変形しているように見えるという錯視(これの基本パターンは約10年前にAnstisが発見し,フットステップ錯視とよばれている)を,新しい錯視アートの創作へ利用する方法も見つけた.この方法で作った作品「満月のこうもり」は,日本基礎心理学会主催の第3回錯視コンテストで入賞することもできた.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当初の目標は,1種類のタイルによるタイリングと,図地反転タイリングを工学技術へ進化させることであった.一方本年度は,これらに加えて,格子タイルパターンの上を図形が移動することによって変形してみえる錯視効果を利用した新しいアートの可能性を見つけることができた.このように,目標にはなかった新しいタイリングアートの開発に対しても見通しをつけることができたので,当初の計画以上に進展したとみなせる.

今後の研究の推進方策

杉原を中心として,図地反転タイリング自動制作法を次のように改良および拡張する,
(1)2種類のタイルをエッシャーの「空と水」風に組み合わせるタイリングに対して,タイル境界を四つの部分に分割する今までの方法は,タイルの形によって分割位置が不適切となる場合があったが,この欠点を改良する。(2)昨年度に開発した3種類のタイルに基づく図地反転錯視タイリング制作法は,与えるタイルによって結果の質に大きな差が出る.そこで一部のタイルを与えたときそのすき間を表示して,相性のよいタイルの三つ組をユーザが選択しやすいようにする.(3)1種類のタイルによるタイリングおよび2種類のタイルによるタイリングをユークリッド平面から非ユークリッド平面へ拡張するための基本方針を検討する,(4)縞および正方格子で作られる規則的タイリングの前を任意形状のタイルが等速蓮動するとき変形してみえる錯覚を利用して,タイル動画錯視アートという新しいタイプの芸術表現法を開発する.
今堀を中心として,エッシャー化タイリング問題に対する研究を改良,拡張した以下の研究を行う.
(5)図形の近似手法を曲線を含むものに拡張し,図形表現の柔軟性を高めると共に,より質の高いエッシャー化タイリングの生成を行う.(6)2種類および複数種類の入力図形に対するエッシャー化タイリング問題に対して,エッシャー化タイリングと,図地反転タイリングを生成する2つのアルゴリズムを融合,拡張することにより,新たな高性能解法を設計する.(7)ペンローズタイルに代表される非周期的なタイリング構造に対して,数理と芸術の両面を考慮した新たなタイリング生成法を考案する.

次年度の研究費の使用計画

新しく見つけた格子タイルパターンを利用した錯視アートを中心に,国内外で研究発表,錯視コンテストへの出場などを行う.そのために出張旅費を使う.また開発したパターン生成法の動作確認のために新しいパソコンとモニターも購入する.タイリングパターンの計算結果を実際にものとして作るために,工作材料,工作工具等も購入する.

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) 図書 (1件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] A Local-Search Based Algorithm for the Escherization Problem2012

    • 著者名/発表者名
      S. Imahori, S. Sakai
    • 雑誌名

      Proceedings of the IEEE International Conference on Industrial Engineering and Engineering Management

      巻: (Outstanding Conference Paper Award) ページ: 151-155

    • 査読あり
  • [学会発表] バクテリアの時空パターンとモアレ錯視2013

    • 著者名/発表者名
      小林奈央樹, 脇田順一, 森山修, 山崎義弘, 杉原厚吉, 松下貢
    • 学会等名
      日本物理学会大会
    • 発表場所
      東広島市
    • 年月日
      2013-03-28
  • [学会発表] 2種類の図形によるタイリング生成2013

    • 著者名/発表者名
      川出静, 今堀慎治
    • 学会等名
      愛知OR研究交流会
    • 発表場所
      名古屋
    • 年月日
      2013-03-13
  • [学会発表] フットステップ錯視アート2012

    • 著者名/発表者名
      小野隼, 友枝明保, 杉原厚吉
    • 学会等名
      NICOGRAPH
    • 発表場所
      京都
    • 年月日
      2012-11-17
  • [学会発表] Footstep Illusionを利用した錯視アートの試み2012

    • 著者名/発表者名
      小野隼, 友枝明保, 杉原厚吉
    • 学会等名
      日本応用数理学会年会
    • 発表場所
      稚内, 北海道
    • 年月日
      2012-08-29
  • [学会発表] An Improved Method for the Escherization Problem2012

    • 著者名/発表者名
      S. Sakai, S. Imahori
    • 学会等名
      The 15th Japan-Korea Joint Workshop on Algorithms and Computation
    • 発表場所
      Tokyo, Japan
    • 年月日
      2012-07-11
  • [図書] 錯視図鑑2012

    • 著者名/発表者名
      杉原厚吉
    • 総ページ数
      199
    • 出版者
      誠文堂新光社
  • [産業財産権] 時計装置及び時計プログラム2012

    • 発明者名
      小野隼, 友枝明保, 杉原厚吉
    • 権利者名
      明治大学
    • 産業財産権番号
      特許, 特願2012-173418
    • 出願年月日
      2012-08-03

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公開日: 2014-07-16  

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