研究課題/領域番号 |
24360039
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
杉原 厚吉 明治大学, 研究・知財戦略機構, 特任教授 (40144117)
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研究分担者 |
今堀 慎治 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90396789)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | タイル / 図地反転アート / エッシャー化 / ロバスト幾何計算 / 錯視効果 / 多義立体 |
研究実績の概要 |
タイリングアートの制作作業を、だれにでもできる工学技術に昇華させるという目的に沿って、本年度は次のような実績を上げることができた。 [1] 図地反転タイリングに関しては、エッシャーの「空と水」に代表される2種類のタイルによるタイリングを、3種類のタイルによるものへ拡張する前年度からの作業を継続した。 [2] 特定の加工を施したタイルとその鏡像をそれぞれグループにして平面上の二つの領域に配置すると、全体が一つの静止図形であるにもかかわらず、二つのグループのタイルが別々の動きをするように見えるという錯視図形の簡易な作り方を、描画ルールとしてまとめた。これは、すでに知られている錯視図形の作り方を、視覚情報を処理する脳の神経細胞に関する知見と照らし合わせて、再整理したものである。 [3] 二つの方向から見たとき異なる形に見えるという性質を持つ多義立体の例を創作した。従来の図地反転タイリングは、タイルが空間的に変形して図と地が入れ替わるのに対して、この立体を回転させたときに生じる一方から他方への連続な変形の知覚は、図地反転タイリングの時間版とみなすことができる。これは、当初の研究計画では想定していなかった新しいタイリングアートの発展方向であり、その数理的性質を解明し、自動創作アルゴリズムを構成することは、新しい研究課題として浮かび上がった。 [4] 1種類の図形によるエッシャー風タイリングに関しては、入力図形の特徴を保持したタイリングを実現するために、点の重みを導入した重み付きエッシャー風タイリングを考案し、これを計算するアルゴリズムを提案した。 [5] 2種類の図形によるエッシャー風タイリングに関しては、タイリングという観点での図形の相性に着目し、相性の良い2つの図形によるタイリングを生成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
図地反転タイリングアートについて、当初はエッシャーの作品[空と水」に代表される平面に敷き詰めたタイルの変形パターンのみを研究対象としていたが、立体を回転させたとき知覚される形状の時間的変化という新しいクラスも追加することができた。これは、当初の計画時点では予想していなかった新しい研究成果であり、当初の計画以上に進展しているとみなすことができる。
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今後の研究の推進方策 |
図と背景が入れ替わる図地反転タイリングに関しては、次のように研究を推進する。 [1] 昨年度までに開発してきた「空と水」風図地反転タイリングアートの3種タイルへの拡張をさらに推進し、3種のタイルの連続変形パターンのメニューを増やす。[2] 図地反転タイリングアートのひとつの新しいバリエーションとして、二つの方向から見たとき、まったく別の意味のあるタイルに見える立体のクラスを特徴づけ、その数理的性質を解明し、それを自動生成するアルゴリズムを作って、立体例も試作する。[3] 果実の表皮模様などの曲面上のタイリングパターンをボロノイ図を使って近似することにより、曲面上でも実現できるタイリングアート基礎を作る。 望みの図形を与えたとき,それに最も近い図形で平面を敷き詰められるパターンを自動生成する方法(エッシャー化タイリング)に関する以下の研究を実施する. [4] 入力図形が与えられたとき,その入力図形の特徴となる部分を定め,その部分をできるだけ保持した図形によって平面を敷き詰めるパターンを生成する.入力図形の特徴となる部分は,個人の感性を反映することができるように,ユーザによる手入力を基本とするが,特徴となる部分を自動判別する方法についても検討を行う. [5] エッシャー化タイリング問題に対する局所探索アルゴリズムを拡張することで,2種類および複数種類の入力図形に対するエッシャー化タイリングを生成する手法を確立する.さらに,タイリングという観点で相性の良い図形を選択する方法を提案し,この方法を組み込むことで,複数種類の図形による高品質なエッシャー化タイリングを生成する.[6] 従来のエッシャー化タイリングの研究では,多角形による平面の敷き詰めパターンを生成したが,これを曲線を含む図形に拡張することで,より多様なエッシャー化タイリングの生成を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が約1,600千円生じたが、そのうちの1,380千円は、研究成果の紹介DVDの制作に使用する計画で、研究を進めてきた。しかし、DVDの中で撮影する立体の制作が遅れたために、撮影も遅れ、DVDの納品が2015年3月31日となった。このように目的に沿って研究を進め、研究費も使ったが、大学の経理処理システムの事情から、支払いが年度を越えることになったために、次年度使用額として処理されることになった。
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次年度使用額の使用計画 |
研究紹介DVDの制作費は、新年度が始まったらすぐに支払う予定である。
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