研究課題/領域番号 |
24360048
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
川田 宏之 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (20177702)
|
研究分担者 |
細井 厚志 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60424800)
荒尾 与史彦 同志社大学, 理工学部, 助教 (40449335)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 複合材料 / カーボンナノチューブ / 界面評価 / 気相成長法 / 材料強度 |
研究概要 |
本研究では,カーボンナノチューブ(CNTs)を炭素繊維表面に合成することで,毛細管現象・アンカー効果によって炭素繊維と母材樹脂の濡れ性を高め,界面接着性の改善を図る.また,CNT析出炭素繊維を強化材として熱可塑性樹脂 (TP)と組み合わせることで階層型複合材料の創製を行い,疲労特性および衝撃特性の向上を成し遂げることを目的とする. 従来の研究において,酸処理などの前処理を行うことで炭素繊維表面へCNTsを析出させる方法が考案されているが,析出プロセスにおいて強化繊維自体の強度低下生じることが問題となっている.そこで,昨年度研究では化学気相成長法 (CVD法)を用いてPAN系炭素繊維表面にCNTを析出させ,強化繊維の機械的特性の低下を伴わないCNT析出プロセスの確立を行った.また,CNT析出炭素繊維を強化材とする階層型マルチスケール複合材料を作製し,CNT析出に伴う機械的特性への影響を評価した. PAN系炭素繊維に対し,750℃,40minの熱処理で炭素繊維表面の収束材を除去した後,触媒となるNi薄膜を蒸着によって成膜した.次に,Niのナノ粒子化を目的としてアニール処理を施した後,CVD法によるCNT析出を行った.以上の析出プロセスによって,高アスペクト比のCNTを短時間で合成することが可能となった.単繊維引張試験およびフラグメンテーション試験の結果より,CNT析出プロセスにおける炭素繊維の機械的特性の低下は確認されなかった.また,CNT析出に伴うアンカー効果によって約224%の界面せん断強度 (IFSS)の上昇が達成され,繊維/樹脂間での応力伝達効率の上昇が示唆された.さらに,CNT析出炭素繊維を用いて複合材を作製し,層間せん断強度 (ILSS)の32%の向上を確認した.以上の研究結果より,ミクロおよびマクロスケールの界面特性の向上に対するCNT析出の有効性が確認された.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までの研究により,炭素繊維の機械的特性の低下を伴わないCNT析出プロセスの確立に成功し,炭素繊維/母材樹脂界面の接着性向上へのCNT析出の有効性を示した.また,CNT析出炭素繊維を強化材とした,階層マルチスケール複合材料の作製に成功している.現段階において,本研究の最終目標である疲労特性および衝撃特性を評価する準備が整っており,当初の研究計画に沿って研究が進行している.
|
今後の研究の推進方策 |
今後,CNT析出炭素繊維を強化材とし,熱可塑性樹脂 (TP)を母材とした階層マルチスケール複合材料を作製し,疲労特性および衝撃特性を評価する.CNT析出炭素繊維は通常の炭素繊維と比較して高い界面強度を有することから,CFRTPの疲労特性・衝撃特性の大幅な向上が期待される.疲労試験は,科学研究費補助金にて購入した電磁式疲労試験機を用いて行い,疲労強度および疲労寿命評価を行う.また,繊維/樹脂界面のはく離進展特性を破壊力学的に評価すると共に,原子間力顕微鏡を用いたナノスケール観察により,CNT析出による疲労強度発現メカニズムを明らかにする. 衝撃試験ではスプリットホプキンソン棒 (SHPB)試験機を用いて,準静的~約200[1/s]までのひずみ速度領域において引張特性の評価を行う.実験結果から衝撃特性の向上に対するCNT析出の有効性を評価する.
|