研究課題/領域番号 |
24360049
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
田中 啓介 名城大学, 理工学部, 教授 (80026244)
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研究分担者 |
來海 博央 名城大学, 理工学部, 教授 (30324453)
藤山 一成 名城大学, 理工学部, 教授 (20410772)
藤井 朋之 静岡大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30377840)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 機械材料・材料力学 / 疲労 / 破壊力学 / 薄膜 / ナノ結晶 / 微小構造 / LIGA / き裂進展 |
研究概要 |
1 スルファミン酸ニッケル浴を用いた電着法で、ナノ結晶NC (粒径約10nm)と超微細結晶UFC (粒径約600nm)および多層膜NC-UFC を創製することが可能となったが、この手法をUV-LIGAプロセスに適用し、切欠きを有するナノ結晶試験片を製作した。切欠きの形状は切欠き半径は0.1mm. 0.5mm, 2.0mm の3種類に変化させ、応力集中がS-N特性に及ぼす影響を検討した。同一切欠き材の場合には、NC材の方がUFC材より強度は高く、また同一材では切欠きが鋭いほど強度は低くなる。これらの疲労強度に及ぼす切欠き形状の影響は点応力モデルによって予測可能である。また、UFGの切欠き材の表面層にNC膜を多層化すると疲労強度が大きく上昇する。 2 放射光の回折プロファイルのフーリエ解析により評価したナノ結晶粒径分布を、透過電子顕微鏡(TEM)により測定した分布と比較し、平均粒径が約30nm以下ではほぼ一致した。また、幅広がりより転位密度を評価することが可能となり、繰返し負荷サイクルでのその場測定に適用する基礎が固まった。 3 疲労き裂進展試験をNC, UFC材料について応力比R=0.1および0.2で行い、き裂進展挙動に及ぼす応力比の影響を明らかにするともに、き裂先端近傍を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した。UFC材では粒内すべりと粒界変形が認められたが、NC材では主き裂先端近傍に粒界微視き裂が形成され、それを連結することでき裂が進展する。破面にはストライエーションは認めらない。 4 薄膜の特性を一層明確に抽出するため、電着を46h程度の長時間行い、厚さ1mm程度のバルク材の創製を検討した。電着液を循環して、かつpHを一定に保つことによって、断面に渡ってほぼ均一の結晶構造創製する成功した。UFC材ではバルク材の方が強度が高いが、NC材ではバルク材の方が低く、材料欠陥の影響が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1 LIGAプロセスによるナノ結晶NC,UFCの切欠き試験片の創製と、疲労特性評価に関しては順調に進行し、材料の応力集中あるいは欠陥による疲労強度低下の定量的予測手法が構築されつつある。 2 ナノ結晶の疲労損傷の微視機構の解明のために、損傷が顕著である、長いき裂の先端近傍のSEM観察を行い、先端近傍に粒界微小き裂が形成され、その連結により疲労き裂が進展することは明らかになったが、定量的にモデル化するには至っていない。負荷除荷サイクルでのその場観察が必要であることが痛感された。 3 ニッケル浴にタングステン酸ナトリウムを添加することにより、Ni-WC合金薄膜の粒径が6nm程度までの薄膜を創製する方法を検討したが、安定的に膜を創製する条件の決定は困難を極めた。その結果、現在その条件をほぼ明らかにしたが、創製法の開発段階に留まっており、計画していた合金膜および多層膜の疲労特性評価には至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
1 LIGAプロセスによるナノ結晶切欠き試験片の創製と疲労特性の評価については成功しており、今後、広範囲の欠陥形状寸法の疲労強度への影響評価、同時に全寿命のき裂過程と進展過程への分離評価をおこなう。さらに、微小バネの創製と疲労評価へと展開する。 2 ナノ結晶の疲労損傷の微視機構のモデル化を目指して、疲労き裂を有する薄膜試験片の、SEM内負荷除荷サイクルでのその場観察を行い、損傷の定量化を進める。また、X線プロファイル解析との併用により損傷機構の一層の解明を進める。 3 さらに、ナノ結晶材料で膜厚が1mm程度のバルク材の創製を行い、薄膜との比較を行い、ナノ結晶材料における薄膜の効果をより明確に抽出する。 4 ニッケル多層膜化による髙疲労強度構造の創製に関して、層界面における剥離が強度低下を引き起こすため、剥離の防止が課題となっているが、この解決のため結晶粒径を傾斜的に創製することで解決を図る。合金膜を含めて多層膜の疲労特性の評価を推進する。 5 疲労損傷過程のモデル化を推進し、ナノ結晶構造を制御することによる髙疲労強度構造体の創製の方針を総括する。
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次年度の研究費の使用計画 |
現在使用中のX線管球が、今年度に寿命に達するため、断線することを予想していたが、断線せずに長持ちした。 翌年度においては、X線管球の断線が予想されるため、この更新のための費用として準備する。
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