研究概要 |
大面積電子ビーム照射による超硬合金の表面平滑化の基礎データを構築するために,まず通常のコバルトバインダ微粒超硬合金を用いて電子ビームのエネルギー密度および照射回数等の条件を変化させた場合の超硬合金表面観察を光学顕微鏡,レーザ顕微鏡等による観察を行なうとともに,表面粗さの変化について検討を行った.その結果,大面積電子ビーム照射により表面は溶融し,表面粗さ1μmRz程度の表面平滑化を数分で行うことができること,表面の平滑化に対応して表面の光沢度が向上することが明らかとなった.また電子ビームのエネルギー密度の高い条件では表面にマイクロクラックが生じやすいが,弱い場合にはそれを抑制できることが分かった. 次に大面積電子ビーム照射面の材料組織について断面のTEM観察やEDX分析を行ったところ,表面では,微細化した炭化タングステン粒,およびバインダーのコバルトが均一に分布した厚さ数μmの再凝固層が形成されることが分かった. いっぽう,超硬合金表面での電子の貫入現象や超硬合金の材料構造を再現した大面積電子ビーム照射の非定常熱伝導解析モデルを構築し,各電子ビーム照射条件における超硬合金の表面温度の時間推移および温度分布状態を解析した.その結果,表面から数μmの深さで炭化タングステンの分解およびコバルトバインダの溶融が生じる温度分布となることが示された.この解析結果は,電子ビーム照射断面観察および成分分析結果とよく一致しており,その高い解析精度を確認できた.
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り,電子ビーム照射条件による工作物表面温度分布予測と表面層形成メカニズムの検討,超硬合金種による平滑化特性の違いを検討した後,金型寿命に影響する硬度,耐摩耗性,撥水性,離型性等について順次評価していき,表面性状と各種表面特性の相関を解明していく.
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