研究概要 |
社会インフラに用いられる大型設備の現況を反映し,設備の意味情報が付加された3次元モデルである「as-built設備モデル」を,レーザスキャナによる設備の計測点群から全自動で構築できる形状認識処理ソフトウエアの開発が,本研究の目的である. 平成24年度においては,下記の成果を得た. (1)レーザ計測点群の高精度自動セグメンテーションとレジストレーション手法の開発: ・近傍点群の分散共分散行列の固有値解析結果から,点群の局所形状を高速に求める手法を考案した. ・上記手法に加え,法線テンソルの固有値解析,対称性認識を併用した領域成長法により,複雑な計測点群を単純な平面や円筒面の領域へ高精度に自動分割する手法を開発した. ・Screw理論を用いて,複数点群間の対応点間誤差を最小化できる高速なレジストレーション手法を開発し,30点群程度の同時位置合わせが,実用時間内で可能なことを確認した. (2)点群領域の物体クラス分類手法の開発: ・化学プラント配管系統や市街地レーザ計測点群を手動分類したデータセットを,認識率検証用に作成した.'化学プラントの測定点群から,法線テンソル固有値解析を利用した配管系統の自動認識アルゴリズムを開発し,直進パイプでは約90%,接続要素で約80%の高い認識率を達成した. ・市街地レーザ計測点群から,電柱・街燈・標識の柱状物体のみ選択的に抽出するアルゴリズムを開発し,物体の標準的配置を表すコンテクスト特徴を利用することで,約81%の高い認識率を達成した. ・コンクリート橋脚表面のスケーリング劣化を,多時期レーザ計測点群データのレジストレーション結果から,mmオーダーで精密に定量評価できる手法を開発した. 以上の成果を,精密工学会誌,Key Engineering Materials等の雑誌論文で公表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画で平成24年度に実施予定であった局所特徴量に基づくレーザ計測点群の高精度自動セグメンテーションとレジストレーション手法,ならびに部分点群領域の物体クラス分類手法がほぼ計画通り完了し,異なる種類の点群に対して高い認識率を達成できた.なお,部分点群領域の物体クラス分類については,計画時には機械学習法を用いる予定であったが,ルールベース手法による分類を行った方がより高い認識率となることが実験的に分かったため,この手法へ変更した.またこれらの成果を広く一般に公開するため,2012年オランダで開催された本分野の国際技術展示会であるSPAR-EUROPEでソフトウエアのデモンストレーションを行った.また代表者らが発表した配管系統の自動認識に関する学術論文が,本年度,精密工学会において論文賞を受賞した.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度において,点群のセグメンテーション(領域分け)とレジストレーション(位置合わせ),ならびに部分点群の物体クラス分類が可能となったため,今後は当初の計画通り,平成25年度にはコンテクストモデルを用いた物体クラス認識精度の向上,対称性・規則性を利用した欠損点群の補完による自動CADデータ生成,BIMデータモデル標準に則った点群とCADデータの統合を実施する.また平成26年度においては,部分的な再計測によるモデルの自動更新アルゴリズムや,生成されたCADモデルの品質・処理時間の実用性評価に取り組みたい. また平成24年度と同様に,これらの成果を広く一般に公開し社会に還元するため,国内外の学術講演会での研究発表のみならず,技術展示会等にも積極的に参加し成果発表を行いたい.
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究成果発表で参加した2013年度精密工学会春季大会学術講演会の開催日が,年度末の2013年3月13-15日であったため,そのための旅費精算処理が平成24年度内に間に合わず平成25年度にずれ込んだため,経理上予算の繰り越しが発生した.しかし,既にこの精算処理も完了し,現在は使用済みとなっている.
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