研究概要 |
本研究の目的は,RBセラミックス粒子を樹脂材料および金属材料に配合することにより,新しい複合材料を開発し,トライボマテリアルとして応用することである.平成24年度では,水中でのしゅう動材料としての利用が期待されているPEEK樹脂にRBセラミックス粒子を充填した複合材料を開発し,水潤滑下における摩擦・摩耗特性を明らかにした. PEEK樹脂に平均粒径3μmのRBセラミックス粒子を5,10,20,30,40mass%充填することにより,PEEK/RBセラミックス複合材料を作製した.比較材料として,PEEK樹脂,RBセラミックスを用いた-水潤滑下において,半径4mmのステンレス鋼SUS304ボールを相手としたボールオンディスク摩擦試験を行った.その結果,RBセラミックス粒子の充填率によらず,PEEK/RBセラミックス複合材料の摩擦係数,比摩耗量はPEEK樹脂,RBセラミックスに比べ低い値を示した.特にPEEK/RBセラミックス複合材料の摩擦係数については,高すべり速度条件において,0.02程度の極めて低い値を示すことが判った.試験後に発生した摩耗粉の粒度分布を測定したところ,PEEK/RBC複合材料における摩耗粉の平均粒径は0.4pmであり,PEEK樹脂における摩耗粉の約1/70であった.このことからRBセラミックス粒子を充填することでPEEK樹脂の大規模な塑性流動を抑制できることが明らかになった.このようにPEEK/RBC複合材料は,耐摩耗性に優れるために相手鋼材表面へのPEEKの摩耗粉の付着による相手面表面粗さの増加,また,摩耗に伴う自身の表面粗さの増加が見られないことから,すべり速度の増加や接触圧力の減少に伴う流体潤滑効果が他の材料に比べて顕著であり,そのため低い摩擦係数が得られたと推察される. 以上のことから,PEEK/RBセラミックス複合材料は水中でのしゅう動材料としての応用可能性が示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の目的である,PEEK/RBC複合材料の作製とトライボロジー特性の評価がすべて行われただけでなく,PEEK樹脂にRBセラミックス粒子を充填することにより,水中での摩擦係数,比摩耗量の飛躍的な低減効果が得られるなど,最終目的であるしゅう動材料としての応用に向けたポジティブな結果について得ることができているため.
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