本研究では,磁気軸受搭載の血液ポンプを対象に,軸受隙間(ポンプ隙間)の変化が,そのポンプの基本特性,軸受特性,血栓・溶血に与える影響を明らかにし,三つの性能を総合的にとらえた血液ポンプの設計法(バランス設計法)を構築することを最終目的として,研究を進めた. 本年度は,血栓・溶血低減のために有効なポンプ内血流を実現するため,新しいベアリングレスモータの研究開発を,昨年度に引き続き進めた.本ベアリングレスモータは,上記のポンプ内流を可能とする構造,配置であるとともに,ロータに永久磁石を用いない単純構造で,実用化時の低コスト化も期待できる.ベアリングレスモータ単体の試作・評価の結果,目標の非接触支持,最高回転数,最大トルクを実現した.一方,従来の血液ポンプ用磁気軸受と比較し,非接触支持のための消費電力が大きくなった.このため,消費電力の低減構造・方法を検討し,引き続き,改良試作を続けている. また,前年までの流体解析,流体計測を進める過程で,新たに得られた知見を元に,インペラの回転や振動から血液粘度,流量を推定する手法を考案し,その有効性を検証する実験を行った.その結果,グリセリン溶液を用いた模擬血液実験により,実用上,十分な粘度推定精度,流量推定精度を実現した. その一方,血液は,非ニュートン流体のため,その特性の厳密な評価が,血液ポンプの設計や流量・粘度推定で不可欠との指摘を,成果をまとめた論文投稿過程や学会発表で受けた.そのため,本研究の最終段階で,実際のポンプの使用状況に類似した環境で,血液粘度等を評価できる新たな装置を考案,試作し,評価実験を進めている.
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