研究課題/領域番号 |
24360063
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
多川 則男 関西大学, システム理工学部, 教授 (50298840)
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研究分担者 |
谷 弘詞 関西大学, システム理工学部, 教授 (40512702)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ナノトライボロジー / DLC薄膜 / 熱的安定性 / 局所的高速レーザ加熱 / ラマン分析 |
研究概要 |
平成24年度の本研究で得られた成果は以下のとおりである。 ■DLC薄膜の耐熱特性の基礎データを得る目的で、2種類の製法(CVD,FCVA)で作成されたDLC薄膜(膜厚3nm)付きディスク基板を一様に10分間加熱し、加熱後のDLC薄膜の構造変化をラマン分光分析、ESCAおよびエリプソメータを用いて行った。そしてこれまで得られているバルクDLCの加熱による構造変化との比較を行い、超薄膜DLCの耐熱特性の特徴を検討した。その結果、次のことが明らかとなった (1)DLC薄膜は高温になるにつれて200℃~250℃程度で水素および窒素の脱離がおこるとともに、膜のグラファイト化が進展する。この点はバルクDLCの特性とほぼ同等の特性である。 (2)膜の酸化反応(燃焼)が300℃から350℃程度で急激に起こり、最終的にはDLC薄膜が消失することが起こる。この現象はバルクDLCと比較するとより低温で起こる。 (3)CVD薄膜とFCVA薄膜とではFCVA薄膜の方が耐熱特性はよい。 (4)エリプメータにより測定されるディスク基板(DLC薄膜付き)の屈折率変化は上記加熱によるDLC薄膜の構造変化とよい相関があり、ディスク基板屈折率測定でDLC薄膜の熱特性を簡便に評価可能である。 (5)加熱によるDLC薄膜の構造変化は加熱時間依存性があり、実際の熱アシスト磁気記録で問題となるディスク面上への数ns程度の加熱ではたとえ高温になったとしてもその影響は小さいと思われる。 ■購入した顕微ラマン分析装置を使用して、微小領域(直径がμmオーダーの領域)がレーザにより加熱された時の膜厚nmオーダのDLC薄膜の構造変化を調べることができるかどうかを検討した。顕微ラマン分析装置のレーザパワー、レーザ照射時間、レーザスポットサイズなどを調整最適化することで、評価可能であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の計画に基づき着実に進展しており、結果も得られ始めているため。すなわち、当初の研究計画通り、従来加熱法によるDLC薄膜の熱的安定性に関する基礎的な知見が得られるとともに、新たに購入した顕微ラマン分光分析装置で局所的にレーザ加熱された箇所の熱的構造変化に関して評価可能であることがわかったからである。
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今後の研究の推進方策 |
申請時の計画にのっとり、研究を継続する。すなわち、プラズモン増強チップの技術的検討を進め、より高精度にレーザ加熱に対するDLC薄膜の熱的構造変化を計測する手法の研究を進めるとともに、そのデータをベースに従来加熱法による結果と比較することで、局所・高速加熱によるDLC薄膜の熱的安定性のメカニズムを明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
プラズモン増強チップの設計・加工の研究を加速することで使用するとともに、DLC薄膜のナノトライボロジー特性、特に潤滑膜との相互作用に関する研究も若干前倒しで進めることで、それに必要となる構成部材の購入に使用する。
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