平成25年度の研究において、シアノアクリレート蒸気を吹き込む水のpHを下げた環境において収量が大幅に増加することを確認し、また、模擬流路での造影効果やマウスへの投与を通して急性毒性が無いことを確認した。平成26年度においては、より実用的な機能性材料とするべく、粒子生成を行なう反応場でもシアノアクリレートの重合反応速度を遅延させマイクロバブルの収縮時間を確保することで、より微細な中空粒子を生成することを試みた。また、出力の制御が可能な超音波マイクロバブル発生装置を使用することで、シアノアクリレート中空粒子生成の安定化に最適な条件の抽出についても研究を行なった。 その結果、マイクロバブルを吹き込む分散媒に界面活性剤と酸性物質を添加するという簡易的な方法により、生体適合性の膜を有する直径1 μm 以下の中空微粒子が生成可能であることが明らかとなった。さらに、供給気体を変更することで粒子径が変化することも確認された。また、超音波マイクロバブルが発生する条件下においては、超音波出力を極力抑えたほうが粒子生成量が増加するという傾向が確認された。 本研究で生成に成功した数百nmオーダの中空粒子は、例えば、医療分野においてナノオーダのカプセルは癌細胞の周囲で拡張した血管の空隙(EPR効果)を通過可能で粒子が腫瘍近辺に集まりやすい特性を利用した先進高度医療(がん治療など)への適用が見込まれる。従って、断熱材、防音材等の工業分野、超音波造影剤、薬剤輸送担体等の医療分野への応用に応用できる可能性が高まった。今後は、安定的に粒子生成可能な条件を検討し、粒子径変化の詳細なメカニズムを解明する予定である。
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