研究概要 |
本研究は,様々な応用技術が考えられているマイクロバブルの機能のうち,特に超音波医療応用と関連した分野での技術開発を目指すものである.従来,超音波血管造影剤として利用されてきたマイクロバブルにさらに機能を追加し,ドラッグデリバリーシステム(DDS)としての機能を付与することを目指している.具体的な研究内容としては,マイクロバブルにDDSとしての寄与を付与するために気泡表面への様々な物質の添加および気泡の合体・消滅を防止するためのコーティング,さらに,ターゲットとした細胞にだけ特異的に接着するリガンドを表面修飾し目的部位に接着させた後,遠方(体外)から照射された超音波により表面コーティングされた気泡を破砕し,薬剤を放出する手法を確立させる.平成24年度は当初の予定通り,大きさおよびマイクロバブル表面へのコーティングを制御するために,T字型ジャンクションを持つマイクロチャネルにより微細気泡の生成を行った.その結果,オリフィス型のチャネルを用いることにより,単分散径の気泡としては,直径5mのものを,複数気泡径生成のものでは,最小径2mのマイクロバブルを生成することに成功し,T字型マイクロチャネルを用いたマイクロバブル生成法として,血管へ取り込み可能なサイズのものを生成することに成功した.また,従来の知見を参考にし,グリセリン10%,プロピレングリコール10%,純水80%を混ぜた溶液にポリエチレングリコールを1.0mg/ml混ぜることにより微細気泡の合体を阻害することに成功した.以上の成果より,得られたマイクロバブルは,DDSとし要求される条件の一部を満たすことが示され,次年度以降は,当初の予定通り,マイクロバブル表面へのタンパク質修飾と特定部位へマイクロバブル接着の研究を進めることが可能となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り,マイクロバブルの表面に様々な物質をコーティングするためのチャネルを生成し,実際に有機相膜や脂質膜によるコーティングに成功した.さらに本年度は有機相の上に脂質の薄い膜をコーティングする手法を開発し,膜に蛍光物質を含ませることにより,マイクロバブル表面にコーティングされていることを確認した.現在タンパク質分子を表面修飾する段階であり,順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り,超音波診断・治療と関連して,血管内に注入できる直径5ミクロン以下のマイクロバブルを対象に,気泡表面に様々な分子を修飾する技術の開発を進める.具体的には,表面修飾の機能を有するマイクロチャネルによるマイクロバブル生成手法の開発と,表面修飾物質による目的部位への吸着,超音波によるその破壊方法の検討を行なう.また,マイクロバブル内包型ベシクルの開発を進め,葵剤搬送システムへの適用可能性を検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
申請書の段階では,高速度カメラ(Photron製FASTCAM SA2)の購入を検討していたが,実質配分額が満額ではなかったために,このカメラを購入するのに十分な予算が得られなかった.そのため,この別機関で所有している同じスペックのカメラを借用することで対応することとした.これに伴い,最初の年度でカメラ購入費に使用予定だった予算を,毎年度のカメラの借用費に振り替えたために直接経費次年度使用額がある.
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