研究概要 |
風波気液界面を通しての二酸化炭素や熱等のスカラ輸送メカニズムを明らかにし,その信頼性の高いモデルを構築することは,大気・海洋間の炭素収支,ひいては地球の温暖化や台風の発達進路を正確に見積もるうえで極めて重要である.本研究では,大規模かつ高精度の数値シミュレーションにより,風波気液界面を通してのスカラ輸送係数が特異な挙動を呈するメカニズムを,気液界面近傍の乱流挙動とスカラ輸送の関連性を詳細に調べることによって明らかにすることを目的とする.H24年度の研究成果を以下にまとめる. 1、DNSコードのLESコードへの改良 既存の風波気液界面を伴う気液二相流直接数値シミュレーション(DNS)では計算コストの制約から,その適用可能な条件が低Reynolds数,低Schmidt数(Sc=1)に限られていた.そこで,高風速もしくは広領域を対象とした高Reynolds数条件下の計算や,実際の物質(CO2)の輸送を対象とした高Schmidt数(Sc=600)条件下での計算を可能とするため,DNSコードのラージ・エディ・シミュレーション(LES)コードへの拡張を行った.界面追跡手法としては,風波気液界面の形状に合わせて計算領域全体の格子形状を境界適合座標系により時々刻々再構成するALE(ArbitraryLagrangianEulerianFormulation)法をベースとした. 2、飛散液滴,巻き込み気泡,および顕熱・潜熱輸送のモデル化 本計算では,界面追跡法として,液体の体積分率の輸送に着目するVolume of Fluid(VOF)法と気液界面近傍のメッシュが常に細かくなるようにメッシュ形状を自動的に時々刻々再構成するAdaptive Mesh Refinement(AMR)法のカップリング法を用いた.本コードの精度検証のため,第一段階として,当研究室で行った高風速条件下(10m/s以上)の風波水槽実験を対象に上記スキームを組み込んだDNSの試計算を比較的粗いメッシュを設定して実施した. 3、超並列計算に対する最適化 大規模・超並列計算を目指したコードの最適化を行った.
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次年度の研究費の使用計画 |
翌年度に大規模計算を実施するため,スパコンの年間利用料の一部として当該助成金を使用する。また,その他の研究費は当初の計画通り,実験用物品,研究成果発表旅費および人件費・謝金に使用する.
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