研究課題/領域番号 |
24360071
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
後藤 晋 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (40321616)
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研究分担者 |
河原 源太 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (50214672)
清水 雅樹 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (20550304)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 流体工学 / 乱流 / 歳差運動 / 非ニュートン流体 / 乱流変調 / 乱流混合 / 室内実験 / 直接数値シミュレーション |
研究概要 |
『自転軸がゆくっりと歳差運動をする容器』の内部に維持される乱流に対する『作動流体の非ニュートン性』が与える影響を明らかにすることを目的として、室内実験および数値シミュレーションを実行した。前者においては、作動流体として希薄な界面活性剤(塩化セチルトリメチルアンモニウムおよび対イオンとしてのサリチル酸ナトリウム)の水溶液を用いた。とくに25年度は容器形状がこの乱流の変調現象に与える影響を検討するために、異なる形状の回転楕円体容器を製作して室内実験を遂行した。具体的には、球体および長球型回転楕円体容器に加えて、扁球型回転楕円体容器に対する室内実験を行った。作動流体をニュートン流体とした実験によれば、容器形状がごく僅かしか変わらない(回転楕円体はいずれも短軸径と長軸径との比は0.9である)にもかかわらず、乱流の維持条件には劇的な違いが現れることを示した。しかも、2つの回転楕円体容器はいずれの場合も球体容器と比べて有意に強い歳差を乱流維持のために要することが分かった。この乱流維持条件の劇的な変化は、歳差運動を用いた攪拌機などへの応用に際して極めて重要である。そこで、作動流体の非ニュートン性がこの乱流維持条件に与える影響を調べるために、25年度中にレーザードップラー流速測定による臨界曲線の同定に必要な装置の改良を行った。その結果、信号処理器等は実験室に設置したまま小型のレーザーヘッドのみを回転系に設置して実験を行うことが可能となった。容器内壁面と作動流体との境界におけるレーザー光の屈折のために、いまのところ自転軸上の点でのみの計測が可能であるが(24年度までに粒子画像流速測定を用いて明らかにした)容器中央での乱流の劇的な低減現象をより定量的に示した。一方、この系の直接数値シミュレーションにより容器内の剪断速度分布を評価し、それが非ニュートン流体の粘弾性に与える影響を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題は室内実験と直接数値シミュレーションを並行して遂行することでその目的が達成される。上の『研究実績の概要』で述べたように、室内実験についてはおおむね順調に研究を遂行することができている。とくに、25年度までに本研究課題の目的の達成のために必須である実験装置の準備(異なる形状の容器の製作やレーザードップラー流速測定に必要な実験装置の改修など)をほぼ完了することができた。また、基準となるニュートン流体の歳差容器内の乱流の統計性質に関しては、その全貌をほぼ明らかにすることができた。 一方で、数値シミュレーションについては若干の遅れが見られる。これが上の区分で『(3)やや遅れている』とした理由である。とくに25年度中に計画していた非ニュートン流体の構成方程式を用いた直接数値シミュレーションに着手できていない。これは研究上の問題点に遭遇しているためというよりは、室内実験における装置の改修作業に多くの時間を割かれたためである。
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今後の研究の推進方策 |
室内実験に関しては、25年度までに整えた環境に加えて、(作動流体の特性の温度依存性が顕著であるため)非ニュートン流体の実験に必須である実験装置の温度調整機構を26年度当初に導入予定である。これにより本研究課題に必要な実験環境が完璧に整うので、反射性微小鱗片状粒子を用いた可視化実験およびレーザードップラー流速測定による速度場の時系列解析を併用することにより、歳差運動をする容器(球体容器および2種類の回転楕円体容器)内に乱流が維持される条件に対して、作動流体の非ニュートン性がどのような影響を与えるのかを明らかにする。さらに、十分に発達した乱流状態における変調効果に対しては、粒子画像流速測定およびレーザードップラー流速測定を併用したパラメタサーベイを系統的に行う。以上の質的にも量的にも十分な室内実験により、本研究課題の当初の目的を十分に達成できる見込みである。 一方で、数値シミュレーションに関しては、作動流体の非ニュートン性を考慮した数値シミュレーションにいち早く着手する必要がある。これは、これまで我々が用いてきたニュートン流体に対する高精度の数値プログラムを改変して行えば難しくない。しかも、上述のように、室内実験により信頼性の高いデータが得られつつあるので、それらとの整合性の検討を行いながら効率よく研究を遂行することで、数値シミュレーション研究も軌道に乗れば26年度内の十分な進展が期待できる。
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次年度の研究費の使用計画 |
現在、界面活性剤水溶液を用いた室内実験に必須である温度調整機構の構築を行っている。これは作動流体の特性が温度に敏感に依存するためである。この機構に必要な備品の選定はほぼ終えているが、25年度中には契約に至らなかったために、必要な経費を次年度使用額とした。 おもに上述の温度調整機構に必要な備品(循環型の空調装置)の購入(26年5月予定)に充てる。
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