研究課題/領域番号 |
24360076
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
近久 武美 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00155300)
|
研究分担者 |
田部 豊 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80374578)
鈴木 研悟 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50634169)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 燃料電池 / PEFC / 固体高分子 / 生成水 / 凍結 / 二相流 / Cryo-SEM / 拡散層 |
研究概要 |
(1) 本年度はMPLと触媒層の界面密着性が異なる積層構造体に関して、Cryo-SEMを用いた凝縮水の凍結固定化観察実験を行った。その結果、従来のホットプレス転写法によるMPL-触媒層の密着構造ではリブおよびチャネル部における凝縮水分布に顕著な差異が見られたのに対して、両者の密着性が高いGDE法(触媒層上にMPLを形成する方法)による構造では、凝縮水の分布が一様であり、界面に凝縮水が貯留する現象は見られなかった。また、こうした凝縮水分布の差異に対応して、電池性能が変化することを確認した。これらの結果からMPL界面構造とフラッディング特性との関連メカニズムを、これまで以上に明らかにすることができた。 (2) 低温起動実験において、電流密度や酸素濃度を変化させながら、起動停止までの凍結水量の変化とCryo-SEMによる触媒層内氷分布写真との比較、ならびにモデル解析を行った。その結果、氷点下起動時には触媒層内カーボン粒子の接触変化に伴う電気伝導率の低下が、氷形成によるガス拡散抵抗変化よりも大きく影響していることが示唆された。 (3) 触媒層内の電気化学反応モデルを用いて、カーボン粒子径を小さくすることの有効性が予測されていたので、触媒粒子形成過程の粒子撹拌工程を変化させて、性能比較を試みた。その結果、カーボン粒子撹拌強度ならびに撹拌時間を増加する一方、触媒層形成時のホットプレス圧力を下げると、細孔空隙密度ならびに触媒粒子表面積の増大が確認され、電池性能も向上することが確認された。 (4) 昨年度改良した高速演算LBM法によって、複雑な3次元繊維構造を持つ拡散層内の凝縮水挙動の解析を行い、繊維の濡れ性分布が凝縮水排出挙動に及ぼす影響を示すことができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Cryo-SEMを用いて、種々の条件におけるMPL近傍の凝縮水挙動変化をほぼ計画通りに比較しており、期待したようなMPL機能に関する知見を蓄積しつつある。また、3次元格子ボルツマン法の高速演算化にも成功し、複雑構造内の凝縮水挙動をシミュレートできるようになっており、概ね順調に研究が進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
研究は順調に進展しており、平成25年度に行った研究をベースとして、さらに多層構造中の凝縮水分布計測を行う一方、触媒層内のイオンおよび酸素の移動特性、MPL内の気液透過現象ならびに拡散層内の凝縮水移動現象を明らかにする。また、これまでの一連の成果を種々の国際会議で発表するほか、論文投稿を多数行う。 種々のMPL構造を持つ電解質膜・触媒・MPL接合体を製作する必要があるので、そうした消耗品費に充当する。また、Cryo-SEMによる観察実験費にも充当する計画である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
Cryo-SEMを利用した観察実験を実施していたが、年度後半に装置に不具合が生じ、観察実験を中断することとなった。また、触媒材料の制作機材等の購入を次年度に持ち越したため、次年度繰越金が生じた。 修理中であったCryo-SEM装置は近日中に復旧予定であり、本年度の計画を支障なく実施できる見込みである。また、触媒の新たな制作実験や活性表面積計測等を本年度実施する計画であり、最終年度としての海外発表旅費等を含めて、年度内に補助金を使い切る予定である。
|