研究概要 |
本研究では,金属ナノ粒子の凝集状態を加熱に代表されるような外的操作により,能動的に制御する手法の開発を行っている.平成24年度は,金属ナノ粒子として銀ナノ粒子を取り上げ,熱的操作による凝集挙動の変化を詳細に検討した.具体的には,銀ナノ粒子の熱処理条件と,粒子の凝集状態により変化する体積抵抗率の関係を実験的に検討し,得られた結果から体積抵抗率を処理時間と時間の関数として記述するモデルを提案した. 実験では,ガラス基板に銀ナノインクをスピンコートにより塗布し,室温環境で24時間以上乾燥させた後,熱処理を実施した.また,熱処理手法として,定温加熱と昇温加熱の二種類を設定した.定温加熱は電気オーブンにより行い,昇温加熱は赤外線加熱炉により0.5および5.0℃/sの加熱速度で行った.得られた試料の銀ナノ粒子層厚さはレーザーマイクロスコープにより測定した.銀ナノ粒子層の体積抵抗率は,四端子法で測定された電気抵抗値に基づいて,粒子層厚さの分布を加味して算出した. 定温加熱で得られた銀ナノ粒子層の体積抵抗率は,時間経過により指数関数的に減少し,温度上昇によってもその減少度合いが増した.これは銀ナノ粒子の凝集化と定性的に一致するものである.そこで体積抵抗率の変化を,アレニウスの式を用いてモデル化することを試みた.その結果,比較的熱処理温度が高い場合(120~200℃)には,定温加熱条件における体積抵抗率の変化を定量的に記述できることを確認した.しかし,より低い温領領域(120℃未満)における熱処理履歴を勘案する必要がある昇温加熱条件については,特に加熱速度が速い場合に,十分な定量性を持った予測を行うことができなかった.予測モデルの改善について,体積抵抗率の算出精度の向上を行うだけでなく,銀ナノ粒子の表面コート層の熱分解と銀ナノ粒子の凝集を分離したモデルの検討が必要であると考えられた.
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に示すとおり,平成24年度に得られたナノ粒子凝集のモデル化の精度改善を進め,バルク的なスケールで発現する機能との関係を明らかにする.さらに,金属ナノインクの塗布状況を能動的にコントロールする手法を提案し,その有効性を検証する.
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