本研究では,金属ナノ粒子の凝集状態を加熱に代表されるような外的操作により能動的に制御し,発現する機能をコントロールすることを目指している.平成26年度は,基板上でのナノ粒子の凝集塊サイズにより,基板表面の表面エネルギーが変化し,結果として表面濡れ性が変わることについて検討を進めた.また,ナノ粒子層を基板表面において印刷的に塗布する際に重要となる,金属ナノインクの付着強度ならびにパターンニング制御性についても検討を行った. 平成25年度の研究成果により,シリコン基板に銀ナノインクをスピンコートした試料に対し,与える熱処理条件を変化させることで基板上における純水の界面張力が変化することを指摘したが,さらに実験を重ねることで,未処理状態で37 mN/mであった界面張力が処理温度190℃,処理時間50分の条件において63 mN/mまで増加する結果を得た.また,発現する界面張力は,処理温度と時間の関数となることを確認した. 基板上に塗布されたナノ粒子層の付着強度向上を狙って,ポリイミド基板やガラス基板表面に金薄膜コーティング処理を行った際の,金属ナノインクの塗布性への影響について検討を行った.ポリイミドに基板に対する銀ナノインクの接触角は,未処理の状態から基板表面の金薄膜厚さが10 nm程度までは減少し,極小値をとった後に増加する傾向が見られた.一方,ガラス基板については未処理の状態から基板表面の金薄膜厚さが10 nm程度までは増加し,逆に極大値をとった後に減少する結果が得られた.基板の材料種により異なる影響が生じた原因解明は今後の課題としているが,基板に対して適切な前処理を行うことで,基板上におけるナノ粒子層の付着強度は,20-30%程度改善されることが示された.さらに,ナノインク乾燥後のステイン径評価から,基板の前処理により,ナノインクの塗布性が操作可能であることも示唆された.
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