研究課題/領域番号 |
24360083
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
石黒 博 九州工業大学, 大学院・生命体工学研究科, 教授 (30176177)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 熱工学 / 生体熱工学 / 凍結手術 / 凍結保存 / 成熟神経細胞 / 凍結・融解挙動 / 生存性 / 形態変化 |
研究概要 |
本研究課題では、凍結手術と凍結保存への適用を目指し、学術的にも興味深い神経突起を有する成熟神経細胞に対して、1)凍結・融解過程のミクロ挙動、および、2)凍結・融解後の細胞の形態変化を調べると共に、3)凍結・融解後の細胞の生死判別を行い、1)と2)の特性を踏まえ、細胞の生存率の統計的特性を実験的に解明する。また、細胞外凍結による細胞損傷・死滅(溶液効果や氷結晶からの機械的作用が原因と考えられる)の数学的モデル化を行う。 平成24年度には、細胞凍結の基礎的特性を把握するために、成熟神経細胞の汎用的モデル細胞である分化型PC12細胞(ラット副腎髄質褐色細胞腫由来PC12細胞株)と生理食塩水を用い凍結実験を行った。 a)凍結実験に先立って、未分化型PC12細胞の増殖過程で、NGF(神経成長因子,100ng/ml)により分化誘導を行い、分化型PC12細胞が約80%以上の細胞を実験試料とした。未分化細胞の培養・分化誘導条件(血清濃度0.1-4.0v/v%)を変化させ、未分化・分化細胞数、全細胞数に対する分化率を求め、最適条件を明らかにすると共に、細胞増殖を伴う分化の過程を、反応速度論的定式化による数学モデルにより記述した。 b)生理食塩水中の分化型PC12細胞(付着状態)の凍結・融解過程のミクロ挙動(凍結様式、氷結晶と細胞の形態、氷結晶と細胞の相互作用)を、方向性凝固ステージを装着した正立顕微鏡での観察により明らかにした。 c)凍結・融解後の細胞の形態変化を、倒立顕微鏡による明視野観察、抗体染色(細胞骨格のタンパク質分子の染色)による蛍光観察を行った。デジタルホログラフィー顕微鏡により、3次元的形態変化を計測した。 d)細胞膜の色素排斥能(PIによる)に基づく細胞の生死判別により、細胞の生存率を求めた。 e)b)-d)の特性に対する冷却速度(1-100℃/min)と最低到達温度(0-40℃)の影響を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験細胞の作製・準備に関して、PC12細胞の増殖・分化特性を明らかにすると共に、その過程を数学モデルにより記述した。次いで、基本的な水溶液である生理食塩水中で付着した分化型PC12細胞の凍結・融解挙動、形態変化、生存率の特性に対する冷却速度と最低到達温度の影響を明らかにすることにより、当該細胞の凍結の基本特性を把握した。これらの結果は、研究計画にほぼ沿っている。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の研究結果に基づいて、平成25年度には凍結保存を念頭におき、主に今年度注日した特性に対する凍結保護物質(ジメチルスルホキシド)の効果を明らかにする。平成24年度予算の都合上、ハイスピードマイクロスコープの購入ができなかったが、平成25年度には、より安価なハイスピードカメラの購入を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度予算の都合上、ハイスピードマイクロスコープの代わりに、赤外線放射温度計(実験試料の冷却過程の温度分布測定用)を購入したが、前者に比べ安価であったため、助成金の次年度繰越が発生した。平成25年度には当該年度の予算と合わせ、ハイスピードカメラの購入を検討する。
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