研究課題/領域番号 |
24360088
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
田川 泰敬 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20216807)
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研究分担者 |
VENTURE Gentiane 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30538278)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 機械力学・制御 / 運動制御 / ハイブリッド試験 / 減災 |
研究概要 |
多くの地震専門家が、東北地方太平洋沖地震(2011年3月11日)に匹敵する巨大地震が、“30年以内に60~70%”の確率で東海・東南海沖で発生すると予測しており、減災対策に向けた大規模な地震実験を低コストかつ高効率に、かつ高精度に行える環境の実現が喫緊の課題となっている。平成25年度は、上記を踏まえ以下の研究を実施した。 (1) コントローラ・フュージョン:高精度振動実験の実現および成果報告 2008年6月の岩手・宮城内陸地震など、その最大発生加速度が兵庫県南部地震(1995年)を、はるかに上回る地震が頻発している。一方、2011年の東日本大震災や、現在予想されている東海・東南海・南海連動型地震では、長時間にわたる大変位を有する長周期地震動が問題となっており、超高層ビルの共振による倒壊の可能性が懸念されている。これらの地震実験のためには、低周波大振幅から高周波高加速度までをカバーできる振動試験装置の開発が重要である。そこで、我々は低周波大振幅を得意とする変位制御系と高周波高加速度を得意とする変位制御系を融合し、低周波大変位から高周波高加速度までを精度よく再現できる制御手法(コントローラ・フュージョン)を提案し、その有効性を小型振動台実験により確認した。また、その成果を、査読付雑誌論文、査読付国際会議および国内会議において発表した。 (2) リアルタイム・ハイブリッド試験の高度化 リアルタイム・ハイブリッド試験とは、試験対象全体を一つの装置で試験することが困難な場合、試験対象をいくつかのサブシステムに分割し、複数の試験装置あるいは数値シミュレーションを併用し、リアルタイムに対象全体の挙動を模擬する試験手法である。25年度は、これまでに我々が開発してきた制御手法であるDMMおよびIDCSをハイブリッド試験に適用し、2自由度構造物に対して実験による有効性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験装置の不具合などにより、若干の遅れが発生しているものの、ほぼ計画通りに進んでいる。また、モジュール化に基づく新たなハイブリッド制御手法など、新たな発展の可能性も見えてきた。
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今後の研究の推進方策 |
本申請では、開発を目指す高度ハイブリッド試験システムに関して、次の2点に焦点をあて、その基盤技術の研究に取り組んでいる。 (1)動的試験装置と数値シミュレーションを融合した高度ハイブリッド試験システム (2)複数の動的試験装置を統合したリアルタイム・ハイブリッド試験システム これまでに、主に(1)のテーマに関して、リアルタイム(RT)・ハイブリッド試験システムにおいて申請者らが最も重要であると考える2点、すなわち、(a)アクチュエータ制御特性の改善、および、(b)数値シミュレーションの高速化、に取り組んできた。構造物のRTハイブリッド試験では、数値シミュレーションの結果が“アクチュエータ”を介して実システム(試験体)に伝達される。この場合、アクチュエータがRTハイブリッド試験の制御 ループ内に存在するため、アクチュエータの動特性がハイブリッド試験全体の精度に大きく影響を与え、最悪の場合、ハイブリッド試験そのものが不安定化することもある。申請者は、提案するIDCS手法によるアクチュエータ制御特性の改善が、RTハイブリッド試験にも有効であることを実験により確認しており、平成26年度は更なる高度化を目指す。また、リアルタイムでハイブリッド試験を行うためには、数値シミューションによる動的応答計算の高速化が必要不可欠である。平成26年度は、計算の高速化アルゴリズムに関しても検討する。上述のテーマ(2)に関しては本年度新たに小型1軸油圧加振装置を導入し、これまでに獲得した成果と既存の装置とを有効活用し、複数の動的試験装置を統合した新たなリアルタイム・ハイブリッド試験システムの開発の基礎となる基盤研究を実施する。また、研究成果を国内外の学会および学術雑誌に投稿し、発表する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験装置製作過程での不具合により、装置製作が遅れ、次年度使用額が発生した。 装置の不具合の解消により、計画中の実験装置の製作を進めるとともに、最終年度の成果発表のための旅費に充てる。また、モジュール化に基づく新たなハイブリッド制御手法への発展のための装置製作にも使用予定である。
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