多くの地震専門家が、東北地方太平洋沖地震(2011年3月11日)に匹敵する巨大地震が、“30年以内に60~70%”の確率で東海・東南海沖で発生すると予測しており、減災対策に向けた大規模な地震実験を低コストかつ高効率に、かつ高精度に行える環境の実現が喫緊の課題となっている。平成24年度は、上記を踏まえ以下の研究を実施した。 (1)コントローラ・フュージョン:高精度振動実験の実現 2008年6月の岩手・宮城内陸地震や、同年5月の四川大地震など、その最大発生加速度が兵庫県南部地震(1995年)を、はるかに上回る地震が頻発している。一方、2011年の東日本大震災や、現在予想されている東海・東南海・南海連動型地震では、長時間にわたる大変位を有する長周期地震動の発生の確率が高いとされており、超高層ビルの共振による倒壊の可能性が大きな問題となっている。これらの地震実験のためには、低周波大振幅から高周波高加速度までをカバーできる振動試験装置の開発が重要である。そこで、我々は低周波大振幅を得意とする変位制御系と高周波高加速度を得意とする変位制御系を融合し、低周波大変位から高周波高加速度までを精度よく再現する制御手法(コントローラ・フュージョン)を提案し、その有効性を小型振動台実験により確認し、国際会議において発表した。 (2)リアルタイム・ハイブリッド試験の高度化 リアルタイム・ハイブリッド試験とは、試験対象全体を一つの装置で試験することが困難な場合、試験対象をいくつかのサブシステムに分割し、複数の試験装置あるいは数値シミュレーションを併用し、リアルタイムに対象全体の挙動を模擬する試験手法である。本年度は、これまでに我々が開発してきた制御手法であるDMMおよびIDCSをハイブリッド試験に応用し、2自由度構造物に対して実験による有効性を確認、学会発表において高い評価を得た。
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