研究課題/領域番号 |
24360093
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
川嶋 健嗣 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 教授 (40300553)
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研究分担者 |
只野 耕太郎 東京工業大学, 精密工学研究所, 准教授 (90523663)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 力覚提示 / 手術ロボット / 遠隔操作 / 筋電 |
研究概要 |
本研究は,遠隔操作システムにおいて,操作性と安全性向上を目指し,操作者の力み具合等を生体信号として測定し,その特性を考慮した新たな力覚提示方法を提案することを目的として,研究2年目として下記の成果を得た. 昨年提案した,筋電信号から操作者の力み具合を判断し,スレーブ側での外力をマスタ側へ反力として提示する際の力の比率を可変にする制御において,種々の条件で実験を行った.力の比率は操作者の親指つけ根部分で計測した筋電信号に比例ゲインを掛け,それに一定値を足したものを与えた.報告者らが開発した力覚提示機能を有するマスタスレーブ型手術支援ロボットを用いて,スレーブ側での目標押し付け力の実現度合を評価する実験を3種類の比例ゲインに対して実施した.提案した手法が,力の比率を一定にした場合より,目標押し付け力の再現性が高いこと,また複数試行回数間のばらつきが抑えることを確認した. また,操作者に単に反力として力覚提示を行うだけでなく,2つの方法を提案し,手術支援ロボットのマスタ側に実装した.1つは力の方向をより操作者に知覚しやすくするために,人差し指に4つの孔から空気噴流を与える方法である.空気噴流は正圧だけでなく負圧も発生可能とし,流体力を用いる利点を活用した.手術支援ロボットを用いて,模擬臓器への針の縫合実験を行い,提案した方法がより正確に作業が実施できることを明らかにした.もう1つは,人間は弱い力を知覚できないことから,操作者に反力を温度として提示する方法である.結紮動作を模擬して,縫合糸を10回繰り返し引っ張る実験を行った.その結果,提案した方法では,各回の引張力のばらつきが少なく,力提示のみと比較して有意な差があることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的である生体信号を用いた力覚提示方法として,操作者の力み具合を筋電計で測定し,その測定値によってスレーブ側の外力をマスタ側に反す際の力の比率を可変にする方法の有効性を実験的に示すことができた.また,新たな力覚提示方法として2つの方法を提案し、手術ロボットを用いて実験的に評価を実施した.それらの成果を特許出願するとともに,国際学会で発表した.以上より,ほぼ計通りに推移したことから,概ね順調に研究が進展している.
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度として,1年目に提案した筋電から力み具合を推定し,操作者に反す力を可変にする制御方法と,昨年提案した,空気噴流および温度による力提示を組み合わせた方法を提案する.提案手法を研究者らが開発を進めている手術ロボットに実装し,その有効性を実験的に検証する. 医学部と連携し,実際に外科医師での操作実験を実施し,より操作効率,安全性が高まることを実証する.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究は概ね順調に推移したが,一部の実験には,マスタデバイスの改造が必要であり,本年度の残額では対応しきれなかったことから,次年度分の予算と合わせて実施する. マスタデバイスの改良の費用として支出予定である.
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