本研究は,遠隔操作システムにおいて,操作性と安全性向上を目指し,操作者の力み具合等を生体信号として測定し,その特性を考慮した新たな力覚提示方法を提案することを目的として,研究最終年度として下記の成果を得た. マスタ・スレーブ型の手術支援ロボットを用いた力覚提示の評価実験として,より実際の手術に近いタスクとして胆管腸管吻合術に着目し,模擬臓器を用いて同術式を実施した.被験者として,医学部の学生,手術経験6年を有する医師が参加し,力覚提示による学習効果,力覚提示の有無による操作時間,筋電計による力み具合などを測定した.その結果,初心者ほど力覚提示による学習効果が高く,また十分熟練した状態において,力覚提示有りと無しの場合を比較した結果,力覚提示がある場合に2割程度作業時間を短縮できることが明らかとなった.これは,特に同術式では,裏側の縫合など視覚では捉えきれない情報を手に感じることができた結果であると考える. また,昨年提案した,人差し指に4つの孔から空気噴流を与える方法について,評価実験を行った.手術支援ロボットを用いて,模擬臓器への湾曲針の針かけ操作を行い,針の出る位置,軌道などを測定した.それぞれ同一被験者で20回の実験を行った結果,平均位置は空気噴流を与えた場合と与えない場合で大きな差は見られなかったが,そのばらつきに有意な差が見られた.噴流を与えない場合5mm程度のばらつきが生じたが,噴流を与えた場合には, 2mm程度にばらつきを抑えることができた.さらに,力覚情報を反力として操作者の手に反すだけでなく,モニタにスレーブ側で検出した0.5~3Nの外力を6段階の色で同時に提示する方法を実装し,その有効性を実験によって明らかにした.
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