研究概要 |
本年度は,非把持形態によるレオロジー物体のダイナミックマニピュレーションの解析として,主にプレートの高速振動を用いて対象物に伸縮運動を生成する問題を取り扱った.はじめに,解析モデルとして,並進および回転の計2自由度を有するプレートと,2つの質点および両者を結合するレオロジー粘弾性要素で構成される対象物の1次元変形モデルを導入した.このモデルを用いて,プレートの回転加速度振幅に対する対象物の挙動変化をシミュレーション解析によって考察し,最大変形速度を実現するためのプレート運動パラメータに関する最適解を探索した.この結果から,質点の接触挙動を切り替えるプレート運動が,変形速度を最大化するためのポイントになることを突き止めた.この事実に基づいて力学解析を行った結果,回転加速度振幅に対して規定される6つの無次元境界振幅によって,2質点の挙動とこれらを組み合わせた対象物全体の変形挙動が切り替わることを解析的に明らかにした.このことをシミュレーションによって確認し,対象物の変形速度遷移が無次元境界振幅によって支配されること,ならびに,対象物の変形速度を最大とする最適プレート運動が無次元境界振幅のいずれか周辺に存在することを明らかにした.以上のような最適解は,柔軟対象物の物理パラメータに依存する.この点を踏まえ,非把持形態により対象物の物理的パラメータを獲得する手法についても考察した.プレートの高速振動によって回転している柔軟対象物の挙動に着目し,プレート運動周波数の増加に対する対象物の回転速度遷移がローレンツ分布関数によって近似できることを示し,2つの物理的パラメータ(対象物の曲げ固有角振動数および摩擦係数)と2つの分布関数のパラメータに相関関係が存在することを明らかにした.この性質に基づき,対象物の物理的パラメータを推定する手法を提案し,最終的に実験により有効性を確認した.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,力学解析およびシミュレーション解析によって本研究のコアとなるマニピュレーション技術を固めつつ,今後は,実機プロトタイプに得られた知見を反映し,実験を中心に実現性を考察する.
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