研究概要 |
本研究課題では,三次元歩行解析に基づき人間の運動制御系をモデル化し,外見だけでなく制御の点からも人体運動が模擬可能な2足ヒューマノイドロボットを開発することを目的としている.最終的には人間の代わりにロボットを被験者として使用し,福祉用具の定量評価を目指す.ロボットはそれ自身がセンサの集合体であり,また人間を被験者にした場合に比べ倫理的な問題がなく,再現性も高いなど,多くの利点がある.平成24年度は,以下の2点について研究を推進した. 1.歩行運動の計測・解析 人間の歩行運動をモーションキャプチャシステムと床反力計を用いて計測した,赤外線反射マーカについてはPlug-in gait modelの定める39箇所に貼付し計測を行った.従来の歩行解析では矢状面や前額面のみに注目し,二次元で解析しているものが多いが,本研究では三次元的に歩行解析を行うことに特色がある.歩行解析の結果から,(1)水平面における遊脚の着地点は立脚と重心の投影点とを結ぶ線上に存在する,(2)着地時の力学的エネルギーに基づいて着地時の両足の間隔を決定している,という2つの知見を得た.2.三次元歩行解析に基づく運動制御系モデルの構築 歩行解析の結果に基づき,ロボットのための運動制御系モデルを考案した.これは次の2つのポイントからなる.(1)立脚を原点とした極座標空間において,重心の転倒する方向を検出し,遊脚を同じ方向に着地させる.(2)遊脚が着地する前に重心の転倒角度・角速度から着地時の力学的エネルギーを推定し,これを任意の範囲に収めるように歩間隔を修正する.さらに,人間は歩行中に頭部を安定化すること(Head Stabilization)が知られているが,頭部を安定化可能な運動生成法も確立した.
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