研究概要 |
魚の完全養殖を目指す場合,親魚の飼育が困難な大型魚に対しては,近縁種の小型魚のお腹を借りて増やす技術(借り腹養殖技術)が用いられ,機械式又は油圧式マイクロマニピュレータが使用されている.その作業はオペレータの熟練を要する手作業であり自動化への要求がある.本研究では,オペレータの技量に関係なく効率の良い作業が行える様に自動化した,稚魚への高精度なマイクロインジェクションシステムの開発を目的としている.目的を達成するために,今年度は,下記に示す装置の試作及び基礎実験を行った. 1)液流を用いて稚魚を搬送するシステムの試作. (1).稚魚の入ったシャーレをボイスコイルモータで加振することにより発生する液流を利用して作業領域へ稚魚を集合させる装置(2台のボイスコイルモータとXYステージ構成する)を試作した. (2).試作した装置を用いて,微小物体(マイクロビーズ)や不動化した稚魚の搬送実験を行った.・マイクロビーズを用いた実験では,液流の節の位置にマイクロビーズを搬送可能であった.・不動化した稚魚では,搬送は可能あるが,粘性等により数匹が重なりあう現象が確認された.上記実験により,インジェクション実験領域であるシャーレの中心部へ稚魚を搬送することは可能であったが,実用化には不動化がもたらす影響について検証する必要がある. 2)電場が稚魚の成長に及ぼす影響に関する基礎研究. 静電気力等を利用して稚魚を搬送するシステムを作製するにあたり,電場が稚魚の発生,生育にもたらす影響について検証した. ・約2.9V,0.01Aの電流を付与した水槽にハタハタの稚魚(10mm前後)10尾を放流して,生存状況を確認した.二日目には全て死亡し,その後の追実験でも稚魚(10尾)は死滅した.実験結果より,稚魚へ電場付与は稚魚に与える影響は大きく,搬送システムには不向きであるとの知見を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,稚魚を搬送するシステムの要素技術を確立するための2種の装置の試作及び基礎実験を行い,2つのシステム(液流システム,静電搬送システム)の適応性の問題点の確認が出来たので,本研究はおおむね順調に進展していると判断する.
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