研究概要 |
本研究は,直接メタノール型燃料電池(DMFC)の発電電力密度を従来比120%に向上する,という研究目的のもと,これまで触媒担持材料として使用されてきたカーボンナノ材料をカーボンナノバルーン(CNB)やカーボンナノコイル(CNC)といった新奇カーボンナノ材料に置き換えることに取り組む.本年度は,新奇カーボンナノ材料の合成ならびに本材料への触媒担持条件を決定する,という研究実施計画において下記の研究成果を得た。これらの成果は本材料をDMFCへ応用する上で不可欠なものであり,さらにCNCが最も高い触媒活性を示したという成果は既存の材料をCNCに置き換えられる可能性を示した重要な成果である。 (1)研究室内で合成したアモルファス炭素微粒子を共同研究先の企業にて熱処理し,CNBを合成した。また,研究室内でCNCを合成した。CNBおよびCNCは走査型電子顕微鏡(以下,SEM)で観察し,ラマン分光ならびに導電率を評価した。CNBはグラファイト結晶度が高いことがわかった。 (2)触媒金属塩を水素化ホウ素ナトリウムで還元することによってCNCおよびCNB上にPtRu触媒を担持した。PtRu触媒は透過型電子顕微鏡(TEM),x線光電子分光装置(xPs),x線回折装置(XRD)にて分析した。比較対象として,繊維状物質:カーボンナノチューブ(CNT),薄片状物質:酸化グラフェン(GO),粒子状物質:Vulcan,にもそれぞれPtRu触媒を担持した。すべての炭素ナノ材料に粒径約2nmのPtRu微粒子が担持でき,PtとRuのモル比は1:1であった。 (3)メタノール/硫酸水溶液中にて上記触媒の活性を評価した。CNCに担持したPtRu触媒が全触媒の中で最高の特性(260m/cm^2・mg-Pt)を示した。
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