本研究は,直接メタノール型燃料電池(DMFC)の発電電力密度を従来比120%に向上する,という研究目的のもと,これまで触媒担持材料として使用されてきたカーボンナノ材料をカーボンナノバルーン(CNB)やカーボンナノコイル(CNC)といった新奇カーボンナノ材料に置き換えることに取り組む。本年度は,カーボンナノ材料として粒子状のアークブラック,バルカンと繊維状のCNC,カーボンナノチューブ(CNT)の計4種類を触媒担持体として使用し,担持したPt(Ru)触媒の活性を評価した。結果として,CNCやCNTといった繊維状のカーボンナノ材料が優れた触媒担持体であることが示された。これは,新奇カーボンナノ材料を用いた膜-電極接合体を開発するという次年度以降の研究実施計画につながる重要な成果である。 (1)還元法を用いて,いずれの炭素ナノ材料にも仕込み量に対して±4%以内の重量の触媒を担持できた。X線回折の測定結果から,CNCやCNT上に担持されたPt-Ruは良く合金化され,CNT上のPt中に47%,CNC上のPt中に32%のRuがそれぞれ存在することが確認できた。透過型電子顕微鏡(TEM)観察により,いずれの担持体においても触媒微粒子の粒径は1-12 nmの範囲内にあった。AcB,バルカンに担持された触媒ナノ微粒子については,二次粒子によるものと考えられる粒径20nm以上の微粒子も観察された。 (2)硫酸水溶液中で上記触媒の電気化学活性表面積(ECSA)を評価したところ,CNCやCNT上に担持した触媒のECSAの値が大きくなった。また,30 wt.%の担持量のときECSAは最大となった。さらに,メタノールを混合した硫酸水溶液中でメタノール酸化反応(MOR)を測定したところ,ECSAの結果と同様に30 wt.%のとき触媒活性が最も高くなることが分かった。Pt触媒ではCNTに担持したもの、Pt-Ru触媒ではCNCに担持したもののMOR電流値がそれぞれ最も大きくなった。
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