研究課題/領域番号 |
24360108
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
須田 善行 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70301942)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 直接メタノール型燃料電池 / 触媒 / 物資輸送 / カーボンナノコイル / カーボンナノバルーン |
研究実績の概要 |
本研究では、直接メタノール型燃料電池(DMFC)の発電電力密度を従来比の120%に向上するという研究目的のもと、これまで触媒担持材料として使用されてきたカーボンナノ材料をカーボンナノバルーン(CNB)やカーボンナノコイル(CNC)といった新奇カーボンナノ材料に置き換えることに取り組む。前年度までの研究でCNCに担持したPt-Ru触媒が最も高い活性を示したため、第3年度である平成26年度はこのCNC担持Pt-Ru触媒を使用してDMFCの心臓部である膜―電極接合体(MEA)を作製した。本MEA内部には別に撥水層を設け、撥水層の材料としてCNBもしくは市販のカーボンナノ材料であるVulcanを用いて、結果を比較した。これらの検討結果は、最終年度までに発電電力密度を120%に向上するという本研究目的の達成に繋がる重要な成果である。 アノード触媒層の外側に設けられたガス拡散層からDMFCの燃料であるメタノールが注入されるが、撥水層をガス拡散層とアノード触媒層との間に設けることで燃料の輸送が改善する。CNBはグラファイト殻からなる風船状のカーボンナノ材料であり、電気伝導性の高さが特長である。撥水層のCNB重量を1 cm2あたり1.0 から 2.0 mgまで変化させてMEAを作製した。いずれのMEAも撥水層なしのMEAよりも高い発電性能を示し、1.5 mgのCNB撥水層によるMEAは15.3 mW cm-2 の発電電力密度を示した。だが、同じ重量のVulcanを撥水層としたMEAの発電電力密度は22.8 mW cm-2 となり、CNBよりも高い性能を示した。電気化学インピーダンス分光にてMEAのインピーダンスを測定したところ、Vulcan撥水層のMEAは最も低い値を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最も触媒活性の高くなるカーボンナノ材料担持体を見出した上で、MEAの構造に関する検討で一定の結果を出すことができたため、最終年度内に研究目的を達成することが期待できるため。
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今後の研究の推進方策 |
以下の項目について計画通りに研究を進める。 1.DMFC電極内のメタノールクロスオーバ量ならびにインピーダンス測定とその解析 前年度はメタノール濃度計をDMFCに接続して、燃料中のメタノール燃料濃度(mol/L)を正確に測定することには成功したが、発電時にカソードから排出される水分量が少なく測定に至らなかった。まず測定のために膜-電極接合体(MEA)の作製条件を見直す。触媒重量あたりの発電電流密度などを測定して、メタノールクロスオーバによってカソードへ移動してしまったメタノール分子のモル量を測定する。
2.DMFC最高発電性能のための条件確定ならびに研究達成度の最終評価 前年度までに得られたMEAの発電性能をさらに向上させるべく,カーボンナノ材料の撥水性を制御した実験に取り組む。具体的には撥水性を持たせたカーボンナノ材料を両極触媒層の外側に添加することを試みる。最も撥水性の高いカーボンナノ材料を両極もしくはそれぞれの電極に添加して,DMFC発電性能を評価する。なお、高撥水性のカーボンナノ材料を添加することで電極の導電率や空隙に著しい影響を及ぼすことが考えられる。その場合は,周波数応答解析器によってDMFC電極の電気化学的インピーダンス分光(EIS)測定を行い,それに基づいて電荷移動抵抗等の定量的解析を行う。こうした解析結果を援用して、最適なカーボンナノ材料添加量を決定する。最終的に、本研究で得られた最高の発電電力密度を示すPt-RuおよびPt触媒と触媒担持体(もしくは添加材)として用いたカーボンナノ材料との組み合わせを明らかにする。計画した120%の発電性能向上が得られたか最終評価するとともに,触媒重量当たりの最大出力電力密度から触媒使用量の低減の可能性について結論を出す。
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