本研究では、直接メタノール型燃料電池(DMFC)の発電電力密度を従来比の120%に向上するという研究目的のもと、これまで触媒担持材料として使用されてきた市販のカーボンナノ材料をカーボンナノバルーン(CNB)やカーボンナノコイル(CNC)といった新奇カーボンナノ材料に置き換えることに取り組む。最終年度では、CNCが担持体の他に電子伝導体としての機能を有していることに注目した。複数のカーボンナノ材料の電気特性を調べて、MEAの発電性能と比較を行った。その結果、CNCは比較した材料の中で最も導電性が低いものの、発電電力では最も高い値を示す材料であることが明らかとなった。 各炭素ナノ材料(CNB、CNC、Vulcan、昭和電工製VGCF-H)の粉体圧縮電気抵抗を測定し、電気特性を評価した。アクリル製パイプ内に300 mgの測定用試料を収め、その上下に電極を設置した。1.0 MPaまでの圧力を試料に印加し、電気伝導率を測定した。いずれの試料も印加圧力にほぼ比例して電気伝導率が増加した。1.0 MPaにおいて、VGCF-Hの導電率が最も高く(~10 Scm-1)、CNCが最も低い(~0.7 Scm-1)結果となった。これらの材料から既報の手法でMEAを作製して発電電力を評価したところ、CNCが最も高く、VGCF-Hは第3位であった。この結果から、本研究の実験条件では炭素ナノ材料の電気伝導率がDMFCの性能にあまり関係していないことが明らかとなった。別の観点から見ると、CNCの電気伝導性を向上させることでさらにDMFCの性能を向上できる可能性が示唆された。これらの研究成果を雑誌論文として報告する予定である。
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