研究実績の概要 |
1.2D層状MoO3の微粒子化による電極材料特性向上 昨年度の検討によりCaイオン電池用正極材料として充放電可能であることを明らかにしたMoO3の容量増大を図るため、遊星型ボールミルによる微粒子化(平均粒径: 3.9μm → 0.67μm)を行った。その結果、固相内Caイオン拡散パスが短縮化され、過電圧低減・容量増大が可能となった。2電子反応を狙った充放電試験では、電解液分解副反応に由来するクーロン効率低下が認められたものの、1電子反応容量(186mAh/g)を超える205mAh/gの初回充電容量が得られた。 2.3Dフレームワーク構造電極材料の探索・特性評価 結晶構造的に高い可逆性が期待できる材料として、構造内に大きなボトルネックを有するオープンフレームワーク構造材料に着目し、その中でも、シアノ架橋ペロブスカイト型フレームワーク構造を有するプルシアンブルー類似体(PBA;AxM[M'(CN)6]・nH2O、以下MM'-PBAと表記)を検討対象とした。沈殿法によって合成した各種MFe-PBA(M: Ni, Mn, Co)試料の予備試験を通してNiFe-PBAに絞り込み、Caイオン電池用正極材料としての特性詳細評価ならびにその特性改善を行った。その結果、脱水処理を施すとともに、導電助剤として高電子伝導性KBを用いることで、容量・サイクル性などの電極性能を改善することに成功した。また、10回以上繰り返し充放電を行っても容量劣化が見られないことから、これまでになく良好なサイクル特性を示す材料であることが明らかとなった。 3.反応機構解明 XRD,EDX,XPS等の分析援用により反応機構解明を進めた。特に、オープンフレームワーク構造材料として新たに検討したNiFe-PBAの場合、主にFe3+/2+のレドックス反応によってCa2+イオンの挿入/脱離反応が可逆的に進んでいることがわかった。
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