平成26年度はナノワイヤによる発光素子作製のため、以下の2点を中心に検討した。(1) 量子ドットを含む単一ナノワイヤによる単一光子光源に向け、InPナノワイヤアレイのアレイ間隔の制御を試みた。アレイの間隔が異なるInPナノワイヤを有機金属気相選択成長(SA-MOVPE)により作製した結果、アレイ間隔の増大とともにナノワイヤ1本あたりの原料供給量が増加し、ナノワイヤの形状が不均一となることを明らかにすると同時に、これを回避するために成長時のIII族原料の供給量を減少させることが有効であることを示した。そして得られたInPナノワイヤアレイに対してInAsP層を埋め込んだ試料を作製し、そのナノワイヤを低温顕微フォトルミネセンス(PL)により評価した。その結果、明瞭な励起子-励起子分子発光を観測し、これは単一のInAsP量子ドットを含んだナノワイヤを密度を制御しつつ形成に成功した、と結論される。(2) 断面寸法100nm程度のGaAsナノワイヤ成長後、GaAsの横方向成長、さらにInGaAs層を成長することにより、断面寸法700nm程度のGaAs/InGaAsコアマルチシェルヘテロ構造のナノワイヤを作製した。低温PLの結果、半値幅2nm程度でほぼ等間隔に並ぶ鋭い発光ピークを観測した。そしてその温度依存性を評価した結果、ピーク位置の温度変化がバンドギャップによる波長変化よりもはるかに小さいことを示し、このことから基板に垂直に立ったナノワイヤによる共振器の作製に成功した。さらに、パルス光による光励起を用いて顕微PLを測定した結果、励起光強度の増加とともに非線形的に増加するピークを複数観測した。この結果は。垂直に立ったナノワイヤのレーザ発振を示唆している。
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