先に開発した交番磁気力顕微鏡をベースとして、以下の成果を得た。 1.交番磁気力顕微鏡内で強磁性体試料に磁気共鳴を起こさせるために、試料の観察面に平行方向に直流磁場を印加し、それと直交した観察面に平行方向にマイクロ波磁場を印加するシステムを完成させた。マイクロ波は、導波管で給電したスリットアンテナを用いて発生させ、直流磁場は電磁石を用いて発生させた。発生できるマイクロ波の周波数範囲は8.2~12.4 GHzであり、直流磁場の最大値は3 kOeである。 2.導電性の顕微鏡探針に変調させたマイクロ波を印加すると探針振動に変調周波数だけ離れた位置に側帯波が発生することがわかった。マイクロ波の中心周波数を変化させたところ、スリットアンテナで強度が最大となる中心周波数において振幅変調の場合は側帯波の強度が最大となった。周波数変調の場合はこの中心周波数において側帯波の強度がゼロになり、中心周波数の前後約70 MHzで側帯波の強度が最大となることがわかった。この現象は、マイクロ波電場が励振する導電性探針の電荷とマイクロ波電場との相互作用により起こることを定式化により解明した。 3.上記のマイクロ波電場の効果がマスクされるスリットアンテナの中心周波数で周波数変調させたマイクロ波を磁性体試料に照射し、直流磁場を変化させて強磁性共鳴を検出することにより、電場の影響を排除したマイクロ波磁場による高精度な強磁性共鳴イメージングが可能になると考えられる。今後は、試作した装置で強磁性共鳴条件を満たすことができる磁性ナノ粒子集合体等について強磁性共鳴イメージングを検討する予定である。 4.その他、強磁性共鳴イメージングに用いる磁性探針や試料の候補材料について基礎的な磁気特性を明らかにした。
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