研究概要 |
電圧状態のBi-2212固有ジョセフソン接合(IJJ)から交流ジョセフソン効果によって連続的なテラヘルツ波放射が観測される現象はテラヘルツのジョセフソンプラズマ波が接合内でキャビティ共鳴モードを励起した結果と考えられているが,そのメカニズムは十分明らかになっているとは言えずテラヘルツ波の出力も理論的な予想を下回っている。特に,この現象を用いてチューナブルなテラヘルツ波源を実現するためには,共鳴励起に必要な条件たとえばQ値や結合係数などは未解明である。本研究は,交流ジョセフソン効果に代わって,ゼロ電圧状態のBi-2212 IJJに極短パルスレーザーを照射したときに起こる電子対破壊とそれに伴う急激な電流変調によってテラヘルツジョセフソンプラズマを励起する。これまでにテラヘルツ波の放射が確認されているバルクBi-2212 IJJは薄くへき開した単結晶バルクを誘電体基板に接着しているため放熱性が悪くレーザー照射には耐えられない。本研究では,これに代わりMgO段差基板上に成膜したBi-2212薄膜(膜厚数μm)を微細加工した薄膜型Bi-2212 IJJを用いる。平成24年度は,薄膜型Bi-2212 IJJを作製し,電圧バイアス状態でテラヘルツ波放射が起こること確認した。これはBi-2212テラヘルツ波放射デバイスの実用化に向けて極めて有用な成果である。さらに,大阪大学・レーザーエネルギー研究センターにおいて同じ構造の薄膜型Bi-2212 IJJに極短パルスレーザーを照射して電圧状態への遷移と損傷閾値試験を実施した。これまでの試験では損傷閾値以下のレーザーパワーでゼロ電圧状態から電圧状態への遷移は確認できていない。
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